一般住宅を旅行客などの宿泊に有料提供することを認める「住宅宿泊事業法案」が国会に提出された。いわゆる「民泊」のルールづくりだ。自治体によっては、民泊の独自規制に乗り出しているところもある。地域事情を考慮した対応も必要になっている。

 新法案は、地方自治体に届け出ることで民泊サービスを認める。ホテルや旅館が営業できない「住居専用地域」でも可能になる。営業日数は住宅という性格から年180日以内に制限。騒音など生活環境の悪化が懸念される地域では、その期間を条例で短縮することができる。法令に違反した事業者には業務停止命令や事業廃止命令を出し、従わない場合は6月以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。

 法制化の背景には、都市部や観光地での宿泊施設不足と、宿泊客をめぐる騒音やごみ出しなどのトラブル、さらに無許可営業の横行がある。

 2016年の訪日外国人は2400万人を突破した。東京や大阪などのホテルの客室稼働率は80%を超え、宿泊施設不足が深刻になっている。そうした状況の中で政府は訪日客を20年に4千万人に増やす目標を掲げており、民泊への期待は大きい。

 一方、日本の生活習慣に慣れない外国人を中心に騒音やごみ処理などのトラブルも目立ってきている。無許可営業も横行しており、厚生労働省が民泊仲介ウェブサイトで紹介されていた約1万5千物件を調査したところ、営業許可を受けていたのはわずか17%だった。

 法制化の課題は、こうした状況の改善だろう。届け出制によって、自治体は事業者や営業場所を把握できるようになる。観光庁は宿泊実態を把握するためにインターネットを使ったシステムを構築し、事業者と民泊仲介サイト運営者に部屋ごとの宿泊者数や日数などの報告を求める考えだ。

 この二つの仕組みをうまく連携させ、営業日数の順守や周辺とのトラブル防止につなげたい。観光庁は仲介サイトに、営業日数の上限に達した民泊事業者がサイト上で見えないようにするよう求める方針だが、有効なトラブル防止・解消策も併せて考えたい。

 民泊に独自の対応を取っている自治体もある。浅草寺がある東京都台東区は昨春、旅館業法施行条例を改正して民泊物件に帳場の設置を義務づけた。マンションなどでの営業を事実上できないようにする措置だ。京都市は通報・相談窓口を設け、無許可民泊に対する指導を強化している。長野県軽井沢町は貸別荘を除いて民泊を認めない町独自の基準を設けている。

 佐賀の場合は都市部や有名観光地とは事情が違う。宿泊施設の逼迫(ひっぱく)やトラブル多発は現状ではみられない。むしろ民泊は、宿泊施設がない地域の振興やこれからの「体験型観光」に生かせる側面を持つ。西松浦郡有田町では街中の商家などを生かす取り組みも進む。

 地域で事情はそれぞれだ。自治体は法制化を機に、自らの地域に合った民泊のあり方を考えてはどうだろう。規制だけでなく生かす方法も探りたい。利害関係が生じる旅館・ホテル業界や、観光業者、民泊事業希望者など関係者も含めて話し合い、地域事情に沿うルールをつくりたい。(小野靖久)

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