審査結果報告書を大島理森衆院議長(右)に手渡す衆院情報監視審査会の額賀福志郎会長=29日午前、国会

 特定秘密保護法の運用状況をチェックする衆院情報監視審査会は29日、政府が指定した特定秘密に関する審査結果報告書を議決し、大島理森衆院議長に提出した。具体的な情報がないまま、事前に特定秘密を指定するケースの拡大に懸念を表明し、適切な規定を定めるよう政府に要求。昨年求めた国家安全保障会議(NSC)の議論の情報開示に関し、引き続き調査を行う必要があると記した。【共同】

 政府が2015年末までに指定した特定秘密は443件。うち166件に秘密を記録した行政文書がなかったことも判明した。厳格に運用していないものが含まれていたため、政府は36件を見直す。指定解除や文書作成などに取り組む。

 報告は14年12月の法施行後、2回目。政府が特定秘密の運用で十分な措置を講じていない事項があると指摘した。ただ、初報告となった昨年3月に続き、国会法に基づく政府への「勧告」は行わず「意見」にとどめた。額賀福志郎会長が4月の衆院本会議で概要を説明する運びだ。

 報告書では、特定秘密の「あらかじめ指定」には「重大な疑問がある」と明記。16年中に情報が存在しなかったとして5件の指定が解除されたことに触れ「特定秘密の対象が、際限なく広がらないようにする法の基本理念から外れた運用がなされている」と強調した。

 菅義偉官房長官は記者会見で「報告書を精査し、趣旨を十分に踏まえて必要な対応を検討する」と述べた。

 審査会は昨年の報告書で特定秘密の保存期間満了前に秘密文書を廃棄する時は独立公文書管理監がチェックし、管理監による審査会への定期報告の制度化を求めた。今回の報告書は「特段の言及はなかった」とした。参院の審査会も審査結果を取りまとめ、4月以降に伊達忠一参院議長に報告する方向だ。

=ズーム=

■情報監視審査会 特定秘密の指定や解除に問題がないかをチェックする衆参両院の常設機関。各8人の議員で構成する。審査は非公開の秘密会形式で実施。政府から秘密保護法の運用状況について報告を受け、毎年1回、審査結果に関する報告書をそれぞれの議長に提出する。必要に応じて特定秘密の提示を要求できるが、政府は安全保障上の理由などで拒否できる。

=解説=

■運用面の甘さ認識を

 特定秘密の指定などを点検する衆院情報監視審査会が29日にまとめた年次報告書によると、安全保障上の理由で国家安全保障会議(NSC)の議事録の提示を拒むなど、情報開示に慎重な政府の姿勢が明らかになった。昨年の報告書と同じ項目が再び指摘されるなど、運用改善が進んでいない実態も浮かび上がる。

 審査会は、今回の報告書で、具体的な情報が得られると見込んで事前に特定秘密を指定する「あらかじめ指定」を問題視した。情報が得られず指定解除に至ったケースが生じたためだ。これでは「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限って特定秘密とする」という大原則に疑念を生じさせかねない。行政機関は、運用面の甘さを認識し、指定要件を厳格に適用することが求められる。

 昨年の報告書は、政府の独立公文書管理監が定期的に審査会に報告する制度を構築するよう求めていたほか、特定秘密の概要をリスト化した「特定秘密指定管理簿」の表記の統一などを求めた。だが、政府側からは現段階で前向きな回答は得られていない。

 審査会の額賀福志郎会長は29日の記者会見で「われわれは常に政府に勧告して強く対応を迫れる」と強調した。審査会は政府の恣意(しい)的な運用の監視役だ。政府の姿勢が変わらなければ「勧告権」の行使を視野に入れる必要がある。

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