高揚感よりも、やりきれなさが先に立つ。東京オリンピックの開会式まで、きょうであと3年。五輪のシンボルであり、レガシー(遺産)ともなる新国立競技場の建設工事で、現場監督を務めていた23歳の青年が自ら命を断った◆残業時間は月200時間。過労死ラインの100時間をはるかに超える。「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」と、家族や友人、同僚へわびる遺書が残されていた。歴史的な仕事に関わる誇らしさもあっただろう。責任感が強く、心優しい青年の姿が浮かぶ◆新国立競技場をめぐっては建築費が膨らみ、設計コンペをやり直した経緯がある。そのしわ寄せが、現場にのしかかったのか。政府は「働き方改革」の旗を振り、「残業代ゼロ制度」とも揶揄(やゆ)される高度プロフェッショナル制度の導入まで進めているが、ブラック企業は解消せず、非正規雇用も広がり続ける◆きょうは、IT技術を用いて、自宅など会社のオフィス以外で働く「テレワーク・デー」だとか。五輪開催中の混雑を緩和する狙いである。通勤地獄から解放され、生産性が高まるという触れ込みだが、歯止めなく働き続ける恐れはないか、少々気になる◆3年後の未来を想像してみる。華々しく、熱狂に包まれる会場で、どれだけの観衆が青年の死を悼むだろうかと。(史)

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