寒さも和らぎ、日差しが強い日が増えてくる春。寒暖の差が大きく、薄着と厚着のどちらを選べばいいのか迷い、風邪を引く人が多いのもこの時期です。皮膚も同様で、気温が上がり、紫外線が増え汗をかきやすくなると、湿疹(しっしん)やアトピー性皮膚炎など肌にトラブルを抱える人の悩みが増えてきます。佐賀県医療センター好生館の皮膚科部長・古場慎一先生に、春から夏にかけての皮膚トラブルについて聞きました。

アトピー性皮膚炎 花粉も要因

 アトピー性皮膚炎が悪くなる要因の一つとして花粉が挙げられます。花粉は春先に多く、特にスギ花粉が知られていますが、夏や秋にも別の植物の花粉が飛びますから注意してください。

 アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥が原因でかゆみや湿疹の症状が出てきます。治療はステロイド外用薬で炎症を抑え、予防のために保湿剤で皮膚バリアをつくることです。

 一時的に症状がおさまると、保湿剤をやめてしまう方がいますが、アトピー性皮膚炎のお子さんは乾燥しやすい体質なので、症状の有無に関係なく保湿ケアは続けてください。市販の保湿性の高い化粧水などでも構いません。肌が乾燥しないようにしてください。

日焼け止めで 紫外線老化を防ぐ

 春の紫外線は冬の約3倍といわれ、とても多い時期です。帽子をかぶる、日焼け止めを塗る、長袖を着るなどして紫外線予防に努めてください。紫外線はシミやシワを誘発する、いわゆる「紫外線老化」にもつながりますから、日焼け止めは必須です。表の数値を参考にして日焼け止めを使い分けてみてはいかがでしょうか。効果が持続するのは2~3時間なので、その都度、塗り直してください。ひんぱんに塗り直しが難しい場合、出かける前と帰る前に塗ると効果が期待できます。

紫外線防止用化粧品と紫外線防止効果

 紫外線は美容の観点だけでなく、皮膚がんのリスクも高めます。そういう意味でも赤ちゃんのころからの予防が望ましいです。子どもの頃からケアを習慣化することで、30~40歳になってからのシミ、シワの数が違います。日焼け止めを玄関に置くなどして、ぜひ習慣づけてください。

日焼け止めの性能表示~SPFとPAについて~

顔かゆくなる 花粉性皮膚炎

 春先、顔など露出した肌がかゆくなったら、「花粉性皮膚炎」を疑います。花粉症の症状は、目のかゆみ、鼻水などがよく知られていますが、花粉性皮膚炎は、花粉が皮膚に接触しておきる皮膚炎です。顔がかゆくなり、赤みが強くなって腫れぼったさを感じることが多いようです。花粉性皮膚炎と花粉症を合併している患者さんは約半数ですが、花粉症ではない人も発症します。50歳前後の方に多く、発症の原因は気づかない程度の乾燥など肌トラブルを抱えていることが多いようです。

 治療は炎症がひどい場合、ステロイド外用薬などを使用し、炎症がおさまったら保湿剤に変えていきます。保湿で皮膚バリアを強くすることが花粉性皮膚炎の予防につながります。

 最近、ステロイド外用薬を使うと色素沈着やシミが残ると誤解している方が多いようですが、湿疹や皮膚炎は日焼け後の肌と同様に、まず色素沈着を起こしたあと徐々に治癒していきますから、ステロイド外用薬が原因というわけではありません。ステロイド外用薬で迅速に湿疹や炎症を抑えてあげると、色素沈着やあとに残ることはほとんどありません。使い過ぎはよくないですが、専門医に定期的に通い、症状に合わせて適量を使っていけば問題はないでしょう。

疲れたまりやすい夏 帯状疱疹の誘因も

 帯状疱疹は、体の神経節に潜伏している幼少期にかかった水疱瘡のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が病気やストレス、疲れに誘因されて発症します。私の印象としては、佐賀では田植え後、患者さんが増えるようです。夏は疲れがたまりやすいので要注意です。

帯状疱疹とは

 症状は体の半分だけピリピリとした痛みを伴う赤みや斑点が現れ、水ぶくれができます。赤い斑点が出る数日~1週間前、痛みから始まることが多く、最初は「帯状疱疹」の診断がつかない場合があります。まれに痛みがない人やかゆみを訴える人もいます。

 治療は、皮膚には一般的に傷の薬を使い、飲み薬に抗ウイルス薬を服用してもらいます。皮膚症状は1週間ほどで治りますが、痛みだけが残る「帯状疱疹神経痛」になると、皮膚科の領域からペインクリニックで「神経ブロック」など痛みの治療が必要です。強い痛みが長く続く人もいますから、早期診断、早期治療が肝要です。

共用スリッパなど 水虫菌が付着

 春から夏にポピュラーな皮膚のトラブルが水虫です。水虫菌(白癬菌)は共用のスリッパなどに付着していることが多く、足の裏が角質化してかさかさしていると、皮膚バリアが低下しているので、容易に水虫菌が侵入し居つきやすくなります。

 潜在的に水虫菌を持っている人も多く、暖かくなって靴下の中が蒸れやすくなると、足の指の間が白っぽくなってふやけたようになる「指間型」、足の裏に強いかゆみを伴う小さな水ぶくれ状の「水ほう型」の症状が現れることもあります。

 一度水虫になると自然治癒は難しいので、まず皮膚科で顕微鏡診断をしてください。治療法としては、抗真菌剤を使用します。水虫菌は症状が出なくなっても皮膚に潜んでいますから、1日1回3カ月以上塗り続ける必要があります。症状が出なくなったからといって途中で止めると、来年もまた同じ症状が出ます。治療の判断は独断ではなく、医師に任せましょう。

進化するにきび治療

 にきびは、皮膚が硬くなって毛穴が閉塞すると、そこにアクネ菌(にきび菌)が増殖して炎症がおきる「尋常性ざそう」という病気です。皮脂の活動が高い人に多くみられます。最近は、抗菌作用があり、皮膚が硬くなるのを抑える有効な新処方薬・過酸化ベンゾイルやアダバレンが登場して「にきび治療」も進化しました。クレーターのようなニキビあとや色素沈着を防ぐためにも、悩みがあれば専門医を訪れて早めにコントロールしていきましょう。

にきびの治療

肌に潤いを与えて

 皮膚トラブルを減らすキーワードは「保湿」です。年齢とともに保湿力は低下していきますから年を重ねるにつれ、いろんな皮膚トラブルの可能性が高くなります。日常の中で、市販の保湿力の高い化粧水などで肌に潤いを与えて皮膚バリアをつくりましょう。毎日続けること、それが一番の予防です。

ドクター紹介

古場慎一氏

佐賀県医療センター 好生館 皮膚科 部長

古場 慎一 氏

2000年 佐賀医科大学附属病院皮膚科入局:医員、2005年 国立病院機構佐賀病院皮膚科医師、2007年 佐賀大学医学部附属病院皮膚科助教、2009年 米国(ワシントン州シアトル)ワシントン大学皮膚科へ留学、2010年 佐賀大学医学部附属病院皮膚科助教、2013年 国立病院機構佐賀病院皮膚科医長、2015年 佐賀県医療センター好生館皮膚科部長。3月31日で退職。今春から小城市三日月町で皮膚科医院開設。

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