■新しい治療法で視力低下を改善

 急に目がかすむ、ものがゆがんで見える、急激に視力が落ちた、視野が欠けている、と感じたことはありませんか。その症状は網膜静脈閉塞症かもしれません。白内障や糖尿病網膜症など加齢と生活習慣病が目に影響を及ぼすことがあり、網膜静脈閉塞症もその1つです。他の医療機関や施設と連携を密にし、地域に貢献するひらまつ病院(小城市)の眼科部長で、日本眼科学会の専門医でもある木下明夫氏に原因や症状、最新の治療法、予防などを聞きました。

50歳以上の発症が大半

 網膜静脈閉塞症は、網膜を流れる血管・静脈が詰まる病気です。世界では1640万人、1000人に4・4人が罹患しているといわれています。日本の年齢層別の発症割合は、ほとんどの場合50歳以上(図1)。高血圧や高脂血症との合併率が高く(図2)、特に50歳以上で、高血圧と網膜静脈閉塞症を併せ持つ人は64%に及び、生活習慣病が引き起こす中高年の目の病気です。

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動脈硬化が原因 網膜静脈閉塞症のメカニズム

 眼球の奥には、瞳孔から入った光や色を集める、映画でいうとスクリーンの役割をする網膜があります。網膜には動脈と静脈が接して流れていますが、高血圧などによって動脈硬化が進むと静脈を圧迫して血流を妨げるため、血栓ができて詰まってしまいます。静脈が詰まると、血管内の圧力が高まり、静脈の外に血液や水分などが流れ出て網膜にあふれ出してきます。これが眼底出血や網膜の腫れ(網膜浮腫)を引き起こし、さまざまな症状が出てきます。

痛みのない症状 専門医で検査を

 どの部分が閉塞するかで症状が違います。網膜で集めた光の情報を脳に伝える視神経内の静脈の根元が閉塞すると「網膜中心静脈閉塞症」、網膜内の静脈の分枝が閉塞すると「網膜分枝静脈閉塞症」になります。「網膜中心静脈閉塞症」になると網膜全体に、「網膜分枝静脈閉塞症」では網膜の一部に出血や網膜浮腫がみられます。出血の場所によっては、部分的に視野が欠けたり、浮腫の具合でものがゆがんで見えたり、ときどきかすんだりすることもあります。

 特に網膜の中心にある、色や形、光などものを見るための細胞が集まっている黄斑部に網膜浮腫が発生すると、急激に視力が低下します。いずれの閉塞症も痛みは全くありません。症状が出ない場合もありますから、気づかないこともあります。50歳を過ぎ、高血圧など生活習慣病がある人は一度、専門医で検査をしてください。

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注目の最新治療法「抗VEGF抗体療法」

 黄斑部の浮腫による視力低下には、これまで確立された有効な治療法はありませんでしたが、この2~3年で画期的な治療法「抗VEGF(新生血管増殖因子)抗体療法」が登場しました。網膜断層検査で浮腫を確認後、静脈から網膜へ水分を出そうとする働きを持つ「VEGF」という物質の働きを抑え、浮腫を防ぐ薬を目に注入します。具体的には、まず目に点眼液を入れて麻酔をし、次に白目から目の中心にある硝子体に薬を注射します。これで浮腫や視力が改善されていきます。症状によって投与回数や間隔が違いますが、継続的な治療や検査が必要ですから、専門医と相談しながら治療を進めてください。この治療法は、日帰りですみますが、健康保険の適用がありますので、病院にご相談ください。

生活習慣の改善へ

 網膜静脈閉塞症は、生活習慣病の高血圧や高脂血症など合併率がとても高い病気です。日頃から生活習慣の改善を心がけることが、予防につながります。ポイントは6つです。 (1)減塩 (2)お酒を控える (3)適度な運動 (4)適正体重を維持 (5)脂肪分を控え、野菜や果物をたっぷりとる (6)禁煙です。目に対する生活習慣病の影響は大きいので、十分に注意してください。

memo 簡単に詳しい検査可能に

 当科では網膜の断層撮影ができる眼底三次元画像解析(OCT)に加えて、造影剤を使わずに血管動態も確認できる最新機器を導入して、簡単に詳しい検査ができるようになりました。昨年10月から白内障手術を中心に、感染を最高レベル(クラス100)で予防するクリーンな手術室(クラス100)で、安全な手術を行っています。

ドクター紹介

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ひらまつ病院 眼科部長

木下 明夫

きのした あきお 医学博士。川崎医科大学医学部卒業。長崎大学眼科教室、独立行政法人国立病院機構 長崎医療センターなどを経て現職。日本眼科学会(専門医)、小児眼科学会など所属。

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