当選が確実となり、支持者から胴上げされる福岡資麿さん=10日午後8時35分、佐賀市多布施の事務所

落選が決まり、集まった支持者と握手を交わす中村哲治さん=10日午後8時55分、佐賀市神野東の事務所

■自民周到準備で大勝 民進は知名度不足響く 野党共闘かみ合わず

 改憲勢力が国会発議に必要な3分の2超の議席を獲得した参院選。佐賀選挙区は自民現職の福岡資麿氏(43)が、野党統一候補の民進元職の中村哲治氏(44)、幸福実現党新人の中島徹氏(42)を圧倒して再選を果たした。各陣営の担当記者が選挙戦の舞台裏を振り返った。

 A 福岡氏が13万1千票の大差をつけて勝った。

 B 自民は今回、周到に準備をしていた。昨年9月に県連内に選対本部を立ち上げ、団体回りなどを重ねてきた。推薦団体は950近く。6年前の約1・5倍にも膨れ上がった。緩むことなく地盤固めを進めていたよ。福岡氏本人にもまったく緩みはなかった。内閣府副大臣の公務が忙しくても、できるだけ地元に戻って地域行事に顔を出すなど精力的に動いていた。

 A 民進の中村氏は出馬表明が5月の大型連休明けの10日。出遅れが響いた。

 D 民進は複数の人物に出馬を打診したが、福岡氏が強敵だったこともあり、断られ続けた。中村氏は佐賀県では無名。衆参両院で3期10年の国会議員経験から「即戦力」をアピールしたが、知名度不足を挽回するこはできなかった。

 C 民主党時代から国政選挙で県外出身者が出馬するのは初めてだった。選挙では候補者の同級生や親戚、友人らがボランティアとして事務所を活気づける。それができない中村陣営は、両代議士の秘書が孤軍奮闘していた。差し入れの飲み物やお菓子もなく、電話の問い合わせもない。活気という点では福岡事務所との差は歴然だった。

■農業票

 A 自民最大の支持基盤だった農協の政治団体、県農政協議会が自主投票を決めて、その影響が注目されていたね。

 B 得票を見る限り、影響は感じられなかった。知事選の候補擁立を巡る対立やTPPへの反発などで、自民への風当たりは強かったが、「そうはいっても政権与党。敵に回して今後、政策面での締め付けが強くなっても困る」という声も少なくなかった。うまく農業票をすくい取ったといえるんじゃないかな。

 C 票数にこそ表れなかったが、民進側も農協と一定の関係を結べたことに手応えを感じていたよ。県連代表の大串博志衆院議員は中村氏を連れて衆院佐賀2区内の全支所に立ち寄って街演した。「新たな縁ができた」と笑顔を見せていたのが印象的だったな。

 D 参院選は党派より候補者を重視する傾向があるので、それも得票に影響した側面はある。でも衆院選になると話は別だ。佐賀1、2区とも民進の強力な現職がおり、今回のような一方的な戦いにはならない。農政協の対応が鍵を握る。いつ解散になるのか分からないだけに、自民としては早い段階で関係修復に動きたいところだろう。

■割り切り

 A 全国的に野党共闘が注目を集め、1人区では一定の成果も出ている。佐賀はどうだったのかな。

 C 出口調査では共産支持層の73%が中村氏に投票したと回答したが、これをどう見るか。秋田や長野では90%以上が民進候補を支持している。

 B 民進は共産と近づくことで従来の支持層が逃げることを懸念し、「共闘」という言葉を使わないことに徹底的にこだわった。

 C 象徴的だったのが、共産の穀田恵二国対委員長が佐賀入りした時。前日に共産から送られた報道資料には「共産の街演に民進の原口衆院議員も来る」という内容だったが、当日は市民団体の呼び掛けで野党3党の国会議員や県議が集う趣旨に変わっていた。

 A 共産サイドは選挙戦でどう動いていたの。

 D 共産は安保法制のことを「戦争法」と呼んで批判してきたが、候補一本化が難航し、民進が「共闘しない」方針を決めると、戦争法を意識して使わないなど配慮はしていたけどね。

 C 共産県委員会の玄関に一時、志位和夫委員長が写ったポスターと民進のポスターを並べて張っていたけど、民進側から指摘を受けて数日後には別の場所に張り替えていたみたい。

 A 共産はよくへそを曲げなかったね。

 D 支持を広げる段になると「見たこともない人をなぜ…」という党員もいて、幹部は「共産が責任をもって支持している。話を聞けば好感も持てる。自民がいいか野党がいいかということで考えてくれ。割り切ろう」と押し切っていた。

 B 候補一本化の仲介を務めた市民連合の関係者は「効果はあったが、チームワークが悪かった。本気で勝とうとしたのか」と民進県連に苦言を呈していた。ただ、「野党と市民が組む流れは衆院選でも続くし、そうでなければ政権交代はないだろう」との認識を持っている。中村氏の身の振り方や9月の民進党代表選など今後の政治情勢から目が離せないね。

=2016さが参院選=

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