いわゆる「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が、今年から70歳になる。超高齢社会の本格的な到来ともいえる。年を重ねても元気に生きがいを持って暮らせる「生涯現役」をより多くの人が体現できるよう、労働や健康、社会保障などあらゆる角度に目を配った環境整備を進めたい。

 日本の65歳以上の高齢者は全人口の26・7%を占めている。国民の4人に1人を超える数字で、これが2035年には3人に1人、60年には2・5人に1人になるといわれている。そのころには「団塊ジュニア」の世代を中心に4人に1人が75歳以上になるという推計もある。

 日本老年学会などはこのほど、高齢者の定義を「65歳以上から75歳以上にすべき」という提言をまとめた。同会によると、65~74歳の身体機能や知的能力は改善傾向にあり、10年前と比べると5~10歳は若返っているという。意識や健康状態、環境は変化している。

 世間の意識も同様だ。厚生労働白書によると、40歳以上の3千人を対象に実施した意識調査で「高齢者であると思う年齢」を尋ねたところ、最も多かったのは「70歳以上」で41・1%に上り、「75歳以上」も16%あった。こうした状況を背景に「高齢者=75歳以上」という考え方が出てきたのも当然といえるだろう。

 超高齢化社会を考えてみる。少子化の流れの中で、出生数と15~64歳の労働力人口は減少が続く。医療や介護などにかかる社会保障給付費は年々膨らみ、高齢者1人を支える現役世代はかつての10人から2・1人になっている。支えきれなくなりつつある。

 政府は17年度から医療・介護保険制度を見直し、一定の収入がある高齢者を中心に負担増を求めていく。余裕がある人は「支えられる側」から「支える側」に回ってもらおうということだ。幸い、内閣府が行った60歳以上の2千人を対象にした意識調査では、65歳を過ぎても働きたいという人が7割近くを占めている。高齢者が働く社会を実現していくことは、世代の意向と合致するうえ、税金や社会保険料を払ってもらうことで財政負担軽減という効果も見込める。ただ、受け入れ態勢に問題がある。

 高齢者が活躍できる社会づくりはこれからというのが実情だ。従業員50人以上の企業1万5千社に65歳以上の雇用確保について聞いたところ、6割以上が「実施も検討もしていない」と回答。「既に実施」は2割程度だった。雇用促進や能力開発、再就職支援強化、雇用助成制度の充実など、雇用を後押しできる制度や環境づくりが求められている。

 定年再雇用では同じ仕事内容でも賃金が下がり、昇給や評価もなく、第一線を退くケースも結構多い。キャリアが生かせる新しい仕組みや、定年後の新たなライフスタイルを考慮した生活を楽しみながら働ける環境づくりも考えたい。

 労働を支えるための暮らしの支援も大切だ。その一つとして、身近な地域で医療や介護、生活支援などのサービスを受けられる「地域包括ケアシステム」の構築も急務だろう。年齢を重ねると日常生活を家庭だけで支えるのは難しくなっている。老後の不安を軽減し、「生涯現役」を実現する仕組みを探りたい。(小野靖久)

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