「景況感 非製造、中小は悪化」「正社員求人倍率 佐賀はワースト5位」―中小企業の厳しい状況を伝える本紙記事

 介護、年金、雇用、育児…参院選期間中、さまざまな暮らしの現場の声を伝える記事や企画に接した。アベノミクスの実効性と絡んで中小・零細企業の現状をレポートする記事も目立った。

 県内の製造会社社長は「海外からの安い製品に押されて国内の市場は頭打ち。地方の製造業者、中小企業はどこも大変だろう」と話し、アベノミクスにも「首都圏の大企業だけが恩恵を受けている印象がある。地方は若者が流出して疲弊するばかり」と訴えていた。

 地方の中小企業が置かれた環境はこの言葉に集約されよう。

 数字を押さえておくと、日本の中小企業・小規模事業者は企業全体の99・7%、従業員数にすると約70%を占めている。ボーナス支給額など各種統計は大企業を対象にしたものが多いが、中小企業・小規模事業者がこの国、特に地方の雇用と生活を支えていると言っていい。

 では、地方の経済は今後どうか。東京との景気の格差について全国の地域シンクタンクや金融機関に聞いたアンケート調査では、51%が「一段と拡大」と答え、「現状の格差が継続」を加えると、8割超が格差改善の兆しはないとみる。「地方創生」も掛け声倒れになってしまいそうだ。

 もちろん、国も地方も手をこまねいているわけではない。政府は「まち・ひと・しごと」創生本部を設置して、それぞれの特性を踏まえた地域づくりを支援し、県内の市町も「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定した。

 ただ、ひと口に地方と言っても産業構造は異なる。例えば唐津市は全国と比較すると、農漁業など第1次産業の就業率が高い。製造業も農水産物の加工が中心で、大量雇用につながる工場は少ない。

 そうした現状に立ち、唐津市の創生総合戦略は、第1次産業を食品加工・流通販売にも展開していく6次産業や、地元の農産物や天然資源を原料に化粧品産業の集積を目指す唐津コスメティック構想の推進を打ち出している。

 企業誘致は厳しく、若者の流出に歯止めをかけるためにも、地域特性を生かした内発的な産業を興していかなければならない。

 冒頭の社長は(本業のメッキ加工だけでなく)医療用部品の製造に活路を見いだそうとし、「中小企業の新たな挑戦を応援する助成の充実を」とも語った。

 企業側の自主的な経営努力とともに、国、県、市町が連携して支援していくことが必要だ。

 佐賀選挙区で当選した福岡資麿氏はアベノミクスの効果が地方には及んでいないことを認めながら、「佐賀を支えている産業を大事にしていきたい」と述べた。地域社会を支える中小企業・小規模事業者の存在と役割にもっと目を向けてきたい。(吉木正彦)

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