国民の疑念は晴れるどころかより深まったのではないか。

 「李下(りか)に冠を正さずという言葉がある。私の友人に関わることで、疑念の目が向けられるのはもっともだ。今までの答弁ではその観点が欠けていた」

 安倍晋三首相は、24日の衆院予算委員会の閉会中審査で、友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡る問題について、これまでになかった反省の言葉を口にした。

 また、学校法人「森友学園」への国有地払い下げ問題に関しても「妻が名誉校長を務めていたのは事実なので、国民から疑いの目が向けられるのはもっともだ。私の答弁にも至らない点があった」と答弁した。

 両学園の問題に加え南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題の影響で内閣支持率が続落、東京都議選で自民党が惨敗を喫したのに続き委員会前日投開票の仙台市長選でも支援候補が敗北した。

 友人や妻が関係していることが疑念を招いたと認めて低姿勢をアピール、なんとか世論の理解を得ようとしたとみられる。しかし、加計側から働き掛けや依頼があったのではないか、あるいは忖度(そんたく)によって便宜が図られたのではないかとの指摘に対しては、従来通り否定するだけだった。

 主張を裏付ける具体的な証明はなされず、新たな疑問点も浮かび上がってきた。25日に開かれる参院予算委員会も同様の結果に終わるのであれば、野党が求める関係者の証人喚問が必要だ。

 安倍首相の答弁で不自然だったのは、加計学園の獣医学部新設計画を把握した時期。今年1月20日に学園が国家戦略特区に申請した時点だとの認識を示した。しかし、理事長とは「学生時代からの友人」であり、民進党委員の指摘だけでも、両者は昨年7月以降、年末まで6回、食事やゴルフを共にしている。

 さらに、この時期に安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設問題が議論されており、今年1月まで加計学園の計画を認識していなかったというのは理解し難い。計画を把握しながら食事やゴルフをしていたとなれば故意の利益相反となるため、知らなかったことにしたとしか考えられない。

 また、2015年4月初め、首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官が愛媛県今治市の職員と首相官邸で面会した可能性に関する答弁も、納得し難いものだった。

 柳瀬氏は「覚えていない。会ったとも会っていないとも申し上げようがない」と述べる一方、記録がなく、個人的な手帳にも面会相手や日時を記載しておらず、確認もできないとした。

 さらに安倍首相は官邸の入館記録も保存されていないと答弁した。

 結局、自分たちに都合の悪いことには答えないという基本姿勢は全く変わっていないようだ。

 加計学園、森友学園両問題について安倍首相は「李下に冠を正さず」という故事を引き、疑念を招いたことを反省してみせた。この故事は「スモモを盗んでいない」ことが前提だが、安倍首相らの答弁を聞けば聞くほど、都合の悪いことをごまかそうとしているとの疑いが強まってくる。

 必要なのは、もはや反省の言葉や姿勢ではない。具体的な潔白の証明である。(共同通信・柿崎明二)

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