■視線遮り、不安を軽く

 毎年、12月中旬から2月中旬までインフルエンザ、3月に入ると花粉症が流行し、マスクをつける人の姿があふれてきます。一方で、最近では年から年中PM2.5の情報が報道されるためか、特定の時期だけでなく一年中マスクをしている人も増えています。

 「清潔」という視点では、日本人は毎日入浴する習慣もあり、きれい好きな民族。相手への思いやりも深く、ほかの人を感染させてしまうリスクを考え、迷惑を掛けたくないという気持ちから、マスクは安心・保証・配慮のための手軽な手段でもあります。

 ところで最近、「マスクの意外な使われ方」について特集が放送され、病気以外の理由でマスクをする人が増えており、すっぴんやヒゲを隠すという使い方があると紹介されました。さらに、心の不安から日常的にマスクを「外せなくなってしまった」人が取り上げられ、心の不安を軽くするために、他人から向けられる視線を遮ることができるという利点もあるようです。

 古くから、日本人のメンタルヘルス領域では、ほかの民族と比較し、日本人では人と人とが対面して、お互いに目を合わせて対話することが辛い、いわゆる対人恐怖症が多いと指摘されてきました。その一つの予防策として、マスクは自分の顔の一部を隠すことができるため、ストレスが軽くなり、より円滑にコミュニケーションができる方法といえます。

 ただし、大学生のメンタルヘルスを考えると、若い世代の人間関係能力は落ちているように思えます。雑談が苦手だと感じている若者はたくさんいます。友人とつながり続けていることに疲れを感じ、友達を怖がっているようにさえ見える若者もいます。電車などの交通機関に乗ってみると、ほとんどの人がスマホとにらめっこしている現状を考えると、マスクも人と視線を合わせたくないための手段かもしれません。

 感染症・花粉症、環境汚染の治療や予防ためのマスクの利用は当然重要ですが、心の問題に対する利用は、自信を取り戻して自分の意見を堂々と述べることができるような体験を重ねてほしいと思います。(佐賀大学保健管理センター長・精神保健指定医 佐藤武)

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