一票一票に託された市民の思いをどう形にしていくか。新市長の責務は大きい=29日、唐津市鎮西スポーツセンター体育館

 唐津市長選は2度目の挑戦となった元県議の峰達郎氏(56)が前副市長の岡本憲幸氏(61)ら3氏を下し、初当選を果たした。知名度をはじめ勝敗にはさまざまな要因が絡むが、選挙戦略、戦術の面とともに、地域社会で起きている変化に目を向ける必要がある。

 峰氏は昨年3月、いち早く出馬を表明する一方、「ポスト坂井」を模索する政治経済界や市議会主流派の人選は難航した。それが11月の唐津くんちを挟んで、市役所生え抜きの岡本氏に白羽の矢が立つや、峰氏陣営は「刷新か継続か」の一点に争点を絞る戦術にシフトした。

 「唐津を変える。私が変える」という直截的(ちょくせつてき)な訴えは、不祥事が相次いだ市政に沸々としたものを抱いていた有権者の心を捉えた。短いスローガンで選挙を圧勝した小泉元首相の「ワンフレーズ・ポリティックス」を想起させる。また「市政を市民の手に」という訴えは、小池百合子東京都知事の「都民ファースト」と重なる。

 そうした意味で、既成政治への不信と変革を求める時代の空気が生んだ選挙結果とも言えよう。

 一方で、二項対立的に図式化されるあまり、政策論争が薄まった印象は否めない。

 合併後の周辺部の衰退問題がそうだ。平成の合併は地方都市を核に中山間地域が合併するパターンが多く、中心地域と周辺地域の格差が広がっている。1市6町2村が合併した唐津市は典型である。

 住民の不満は、かつて役場だった支所(市民センター)の機能や財政上の権限など、市政への批判に直結する。佐賀新聞社が選挙期間中実施した世論調査でも、旧郡部住民は「旧市町村間の格差是正」を最も重視したのに対し、旧市部では一番関心が低かった。

 広大な市域を持つ唐津市のまちづくりの難しさを浮かび上がらせる。しかし、後戻りはできない。新市政移行を好機として、もう一度、現状に目を向ける中で、最大公約数的な施策を探っていくしかない。

 新市長の峰氏は市議、県議の経験はあるものの、地方行政トップとしての手腕は未知数だ。だが逆に慣例にとらわれないという期待感が市長に押し上げた。

 市議会保守派、さらには保利王国を支えてきた人脈を二分した激戦は、しこりを懸念する声があるが、そんな猶予はない。

 坂井俊之現市長が3選を果たした前回選挙時の「貸し借り」がその後の不正、混乱の根源となったことを考えれば、律すべき事は明らかだろう。チェック機能が問われた議会、議員はなおさらだ。

 合併後の年月を「失われた12年」としないためにも、市民と誠実に向き合い、信頼関係をつくり上げることから再生と創生への一歩を踏み出さねばならない。(吉木正彦)

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