「決して他言はならないぞ」。こう約束したのは旅芸人、「田能久(たのきゅう)」一座の久兵衛さんだ。落語「田能久」は、久兵衛と大蛇に化けた老人が、互いに秘密を共有する噺(はなし)◆山中の小屋で仲良くなった2人は互いに怖いものを打ち明ける。久兵衛は「金が仇(あだ)の世の中だから金が一番怖い」と言い、大蛇は「体に付いたら命が脅かされる煙草のヤニだ」と話す。そこで、このことは誰にも言わないことを約束して別れる◆この人たちも、きっと「他言無用」と固い約束をしていたのだろう。文部科学省から天下りし大学教授の席に座った前局長、大学と役所の仲介をした文科省OB、大学の人事担当者。この組織的なあっせん、悪事は漏れるもので白日の下となった◆鳴りを潜めていた官庁の天下りあっせんはやはり密かに続いていた。違法行為を隠すため、文科省側は大学に想定問答集を渡し、口裏合わせまでしていたというから、開いた口がふさがらない。あろうことか子どもたちの教育を司る役所がである。全省庁の実態調査へと発展した◆さて、くだんの大蛇は苦手のヤニで退治されそうになり、仕返しに密約をもらした久兵衛の家にお金を投げ込む。影で動く金の問題だけではない。官民癒着の病巣となる危惧をはらむ。他省庁の悪行があぶり出される仕儀となるか。国民が退治せねば。(章)

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