手元に折り畳み式の小さなナイフがある。中国大陸からわずか2キロの沖合に浮かぶ台湾の島、金門島の特産品だ。この島は1958(昭和33)年、中国側が激しく砲撃を加えた「金門砲戦」で知られる。ナイフの材料は、砂浜に残された無数の砲弾だ◆尖閣諸島をめぐって日中が緊迫した2013年に台湾海峡を取材したが、中国の海洋への野望は底知れない。東シナ海のみならず、南シナ海で領有権を主張しており、その海域は通称「赤い舌」。大陸からべろりと舌が伸びているような形で、実に気味が悪い◆その海域の岩礁に中国は人工島を築き、巨大なビルや滑走路を整備するなど実効支配を進めてきた。ところが、領有権争いでぶつかるフィリピンの申し立てを受けた国際機関「仲裁裁判所」が“海の憲法”と呼ばれる国連海洋法条約に基づき、赤い舌を「根拠がない」とばっさり切り捨てた◆不利な裁定が出ると見込んでいたのだろう。威嚇のつもりか、中国は南シナ海で実弾を使った軍事演習を繰り返してもいた。これが大国のふるまいかとあきれる◆金門島では、砲弾を切り出し、刃先を鍛えていく作業も見せてもらった。「材料ならいくらでもあるよ」と苦笑する鍛冶職人。思い通りにならなければ、第2、第3の金門砲戦もやりかねない姿は、さながら駄々をこねる巨人か。(史)

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