記者団の取材に、フリーゲージ導入について「採算が取れない」と強調するJR九州の青柳俊彦社長=東京・永田町の衆院第2議員会館

 「事業者としての立場で、FGT(フリーゲージトレイン)を否定するものではないし、(長崎ルートの整備)方式を決定するものでもない。ただ技術評価委員会の結果を受けて、FGTについては困難であると申し上げた」。与党の検討委員会で「FGT断念」の意見を述べたJR九州の青柳俊彦社長は、記者団の質問にきっぱりと答えた。

■「年間50億円」

 衆院第2議員会館の会議室で開かれた検討委。青柳社長による意見表明と、佐賀、長崎、福岡県選出の国会議員らによる質疑で1時間近くに及んだ。

 2012年の武雄温泉-長崎間の工事認可の際、運営事業者として同意していた経緯を踏まえて、「あの時なぜ同意したのか」との質問も出された。その時点で一定の課題が見えていたはずとの指摘だ。

 「初期投資が高いのは覚悟していたが、保守点検に必要なコストが高いことが新たに分かった」。車輪の幅を自在に変換する複雑な構造を持つが故に、保守点検の作業が複雑で手間もかかるという。安全性の対策を取れば取るほど経済性の問題が大きくなる。事業者として向き合わざるを得ない悩みを率直に語った。

 16年10月に東証1部に株式上場し、株主や市場の視線も意識しなければならない事情もある。17年3月期連結決算で、本業の鉄道事業は1987年の発足以来、初の黒字を達成したが、前期に新幹線車両の減損処理をしたことなどが影響したにすぎない。赤字路線を多く抱えるだけに鉄道事業の採算性への視線は厳しくなる。「年間50億円も負担することは決断しづらいだろう」。委員の一人はこうおもんぱかった。

 「他にどういう方法があるのか」。青柳社長が示した選択肢は、全線フル規格化とミニ新幹線だった。フル規格は費用対効果などの問題、ミニ新幹線は、踏切、そして建設期間中の在来線運休の問題を挙げた。特にミニ新幹線建設の在来線運休対応で「博多-佐賀間はうちの路線で最大の列車本数区間。通勤客も多い。一定期間の運休は難しい」。事実上、選択肢はフル規格に限られるとの認識を示した。

■議論できる環境

 「12年の認可の時に同意していて、なぜ今回、FGT導入困難なのか。もう少し明確に説明してほしかった」。07年にFGT前提の計画に知事として同意した検討委メンバーの古川康衆院議員(佐賀2区)はJR九州に不満を示す一方、「正式な場で考えを表明できたのは、JRにとっては良かったのかもしれない」と推察する。

 「これまでFGT以外の選択肢は禁句だった。今回のことで、国交省も含めた真剣な場でそれが議論できる環境ができつつある」と古川氏。JR九州が投げ掛けた一石は、大きな波となって佐賀、長崎両県を含め関係者を揺さぶる。

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 九州新幹線長崎ルートは、JR九州が事業の核となるフリーゲージトレイン導入断念を表明したことで整備方針が大きく揺らぐ事態となった。JR九州や佐賀県、県内自治体などの反応を探る。

=フリーゲージ暗雲=

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