「28日の与党PTで、県の意見を述べたい」と話した副島副知事=佐賀県庁

■沿線、フル規格の声強まる

 九州新幹線長崎ルートにフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)を導入する計画を困難とする見解をJR九州が表明した25日、佐賀県はFGTを前提とする立場に「変わりはない」と強調し、巨額の追加負担が想定される全線フル規格化に否定的な考えを改めて示した。先行きの不透明さが増した状況を受け、沿線自治体ではフル規格化を求める声が強まった。

 「JRとして検討した結果で、国から新たな提案があったわけではない」。山口祥義知事に代わって報道陣に対応した副島良彦副知事は、JR九州の見解を冷静に受け止め、国の対応を見守る姿勢を示した。

 フル規格の場合、県は実質負担額を800億円超と試算する。与党のプロジェクトチーム検討委員会からの意見聴取を28日に控え、「県の財政状況をみると(フル規格化を)議論する環境にないということを改めて伝え、2022年度の暫定開業や複線化の約束を守ってもらうようにしっかり主張する」と述べた。

 県議会の超党派議員でつくる九州新幹線西九州ルート整備促進議員連盟の石井秀夫会長は「JR九州の方針は思っていた通りの内容。国などは真摯(しんし)に受け止め、しっかり議論する必要がある」と話した。連盟の対応については「佐賀、長崎両県の知事の意見を聞いた上で検討する」とした。

 沿線自治体の嬉野市と武雄市は21日、県に全線フル規格化を求める要望書を提出したばかり。開業に伴い新駅ができる嬉野市の谷口太一郎市長は「FGTの導入が厳しいことは決定的になった。ぜひフル規格でやってもらいたい。県や県選出国会議員への要望も一層強めていく」と述べた。

 小松政武雄市長は「事業者としての判断を重く受け止めるべき」と指摘した。JR九州が整備方針の再検討を求めたことに「考えを聞いてみたい」としつつ、「市としてはフル規格の実現を目指すスタンスに変わりはない」と強調した。

 JR佐賀駅の周辺整備を計画している佐賀市の秀島敏行市長は「JR九州の意向は重い。佐賀市としても計画の練り直しが必要になるかもしれない」と受け止めた。「正式に(新幹線の整備方針が)決まってからでいいと思うが、(フル規格化の場合は)影響やルートの問題など考えなければならないことが出てくる」とも話し、国や県の動向を注視する考えを示した。

■「リレー方式」可能性高く 次善の策議論は難航か

 JR九州の青柳俊彦社長がフリーゲージトレイン(FGT)導入に難色を示したことで、九州新幹線長崎ルートの運行形式はリセットされた格好になった。FGT以外で想定される選択肢は、全線フル規格、ミニ新幹線、スーパー特急に加え、2022年度の暫定開業時に採用される「リレー方式」だ。次善の策としては、いずれも課題があり議論は難航しそうだ。

 全線フル規格化は、長崎県やフル規格での整備が進んでいる嬉野、武雄市などで「待望論」が強い。メリットは、佐賀県が新幹線同意の最大の要因として挙げている「関西直通」ができる点と時間短縮効果だ。博多-長崎間(1時間48分)がFGTでは1時間20分。フル規格になるとルート次第だが、鹿児島ルートの平均速度を当てはめて考えれば1時間を大幅に切ると想定される。在来線特急で約40分の博多-佐賀は、20分を切るとみられる。

 問題は財政負担だ。全線フル規格化となれば、佐賀県の実質負担は約800億円との試算がある。現状の225億円から大幅な負担増となる。県としては「議論できる環境にない」というのが基本スタンスで、財政負担の枠組みが変わらない限り佐賀県が同意することは考えられない。

 スーパー特急方式は、路盤やトンネル、高架などをフル規格仕様で整備するが、電圧やレール幅は在来線仕様にする。そのため現行の新幹線路線への乗り入れはできない。佐賀、長崎県が重視する「関西直通」はできず、FGTよりも時間短縮効果は見込めないという課題がある。

 ミニ新幹線は、在来線区間にフル規格(標準軌)のレールを敷設することで、新幹線区間との直通運転を可能にする。ただ工事期間中は在来線の運行ができなくなり、「片側交互通行」で対応するとしても、運行本数が多い長崎線ではJRの経営的負担が大きくなる。踏切の問題も残り、安全確保や交通への影響など考慮が必要になる。

 可能性が高いのは「リレー方式」。FGTの開発遅れで、昨年3月、佐賀、長崎県や国、JR九州など関係6者で、博多-武雄温泉を在来線特急、武雄温泉-長崎を新幹線で結ぶ「リレー方式」での22年度暫定開業に合意している。武雄温泉駅で特急と新幹線が対面乗り換えできるようホーム改修工事の認可も出ており、暫定開業への支障はない。ただJR九州にとっては運営コストが高くつくだけに長期化への抵抗感は強い。

 現実的な選択肢として「フル規格とリレー方式の2択に絞られるのでは」(自民党県議)との見方が強い。

■長崎・中村知事「考え整理する」

 JR九州が九州新幹線長崎ルートへのフリーゲージトレイン導入が困難との認識を示したことに対し、長崎県の中村法道知事は「安全性、経済性について慎重に検討した上での意見だろうと考える。こうした意見などを踏まえ、今後の整備のあり方について県の考えを整理していく」とコメントした。【長崎新聞】

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