そこにいないことで、逆に存在感が際立つことがある。国連で開かれた「核兵器禁止条約」交渉に参加しなかった日本が、まさにそれだろう。誰もいない日本代表の席には、代わりに白い折り鶴が置かれていた◆その映像を見ながら、イギリスのポップデュオ「スウィング・アウト・シスター」の来日ライブを思い出した。リズミカルな80年代ヒット曲が続いて盛り上がったが、とりわけ静かなバラード「あなたにいてほしい」で、会場がひとつになった◆去って行った恋人への断ち切れない思いを歌い上げた名曲だ。歌手の名前は知らなくても、切ないメロディーを覚えている人は少なくないだろう。織田裕二さんと常盤貴子さんが共演したテレビドラマのために書き下ろした曲で、日本では大ヒットしたからだ◆日本の席に置かれた折り鶴の羽には、英語で「あなたがここにいてくれたら」と。広島・原爆の子の像のモデルにもなった佐々木禎子(さだこ)さんのエピソードは、海外でもよく知られている。被爆し、白血病のために12歳で亡くなるまで、少女は鶴を折り続けた◆昨年、広島を訪れたオバマ米大統領が自ら折った鶴を持参したのも、そこに核廃絶の思いを込めたからだ。切ない願いをのせた折り鶴が際立たせた、被爆国の不在。世界はどう受け取っただろうか。どうにも、やりきれない。(史)

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