試験飛行し、佐賀空港の滑走路上空で向きを変える在沖縄米軍のオスプレイ。奥はノリ養殖の網を張った支柱が林立している有明海=2016年11月8日、佐賀市川副町

 佐賀空港(佐賀市川副町)への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画を巡り、佐賀県は30日、論点整理の素案を公表した。20項目にわたる論点を提示し、指摘された課題と県の確認事項などをまとめている。要旨は次の通り。

■懸念されるような状況にはならないと判断したもの

 【(1)米軍の佐賀空港利用】

 -駐屯地が整備されれば、将来的に米軍基地もできるのではないか。米海兵隊の訓練が佐賀空港で実施されるのではないか。

 防衛省の説明を踏まえると、佐賀空港が米軍基地化する、あるいは米軍が恒常的に佐賀空港を利用することはないものと考える。仮に今後国から沖縄の負担軽減のために米軍の佐賀空港の利用について提案があった場合、今回の要請とは全く別の話として対応することになると考えるが、現時点で政府から県に対して具体的な提案や要請はあっていない。

■防衛省の説明に技術的な観点から不合理な点がないもの

 【(2)オスプレイの安全性】

 -沖縄での不時着水事故について徹底した原因究明と情報開示が必要では。安全性に問題があるのではないか。

 今回の事故に対する防衛省の説明について、「機体自体に問題はなかった」「あらゆる安全対策を講じる」などを受け止め、事故原因に現時点では不合理な点はない。さまざまな検証や過去の事故を踏まえても「オスプレイは安全な機体」との防衛省の評価に変わりはなく、事故率も米海兵隊の航空機全体の事故率と同程度であることを確認した。

 【(3)騒音の生活環境への影響】

 -オスプレイなどの自衛隊機が佐賀空港を利用することで、周辺の騒音が増大するのではないか。

 防衛省が航空機騒音の予測を行い、県も予測方法や予測条件について確かめて特に不合理な点はなく、予測上は「環境省が定める環境基準の57デシベルを超える範囲に住宅はない」ことを確認した。

 【(5)排気ガスによる大気への影響】

 -オスプレイなどの運用により佐賀空港周辺の排ガスが増大し、大気環境に影響を及ぼすのではないか。

 防衛省が環境への影響を予測して、「自衛隊機の飛行に伴って大気汚染物質はほとんど増加せず、環境基準を超えない」としている。県も予測方法や予測条件について確認し、特に不合理な点はなかった。

■防衛省が適切な対策などを講じる考えであることを確認したもの

 【(6)環境アセスメント】

 -防衛省の計画は大規模な開発を伴って有明海の環境悪化が懸念される。県の条例上の環境影響評価(アセスメント)を行う対象にならない場合でも、防衛省は自主的に実施するべきではないか。

 「決定された施設整備の規模などを踏まえ、それが環境影響評価の対象に該当すれば、条例に従い適切に進めていく」という防衛省の考えで問題はないことを確認した。

 【(9)排水による漁業への影響】

 -駐屯地からの排水が有明海のノリ養殖に影響を及ぼすのではないか。特に降雨時の排水によって(ノリに)バリカン症が発生するのでは。

 防衛省からの説明を基に算出した駐屯地(予定地)の排水増加量は、仮に1時間に100ミリの降雨の場合でも、ノリ漁期中の筑後川の水量と比較するとかなり少ないことを確認した。防衛省は佐賀空港の排水対策を参考に十分な対策を行う考えであることを確認した。

 【(10)電波などによる漁業への影響】

 -オスプレイなどが、ノリ養殖のために行う水温などの自動観測や船舶のGPS、レーダー機能などに影響を及ぼすのではないか。

 防衛省は関連法令などに基づき適切に運用する考えであり、特に問題はないと考える。

 【(13)排水による農業への影響】

 -駐屯地整備に伴う土地造成が、周辺の農地の排水に影響を及ぼすのではないか。

 農地周辺で土地の造成などを行う場合、事業者は周辺農家と調整を図って必要な排水対策を行うのが一般的。防衛省は施設整備に当たって排水対策を行うとしており、特に問題はないと考える。

 【(14)照明による農業への影響】

 -駐屯地の夜間照明が、周辺農地で栽培される農作物の生育に影響を及ぼすのではないか。

 通常、施設整備をする事業者は周辺農家と調整を図って対策を行うのが一般的。防衛省は照明対策を行うとしており、特に問題はないと考える。

 【(15)電波などによる農業への影響】

 -オスプレイ等の自衛隊機により、農薬散布をする無人ヘリの飛行制限区域が拡大されるのではないか。

 無人ヘリの飛行制限区域が変更されることはないと、防衛省に確認できた。

 【(17)バルーン大会への影響】

 -自衛隊機が佐賀空港を利用すれば、バルーンフェスタが開催できなくなるのではないか。

 防衛省は「バルーン飛行エリア近傍における飛行を自粛して、バルーンフェスタ開催に影響を与えないようにする」との考えを示しており、特に問題はないと考える。

 【(18)ラムサール条約登録湿地の水鳥への影響】

 -ラムサール条約湿地に登録されている東よか干潟に水鳥類が飛来しなくなるのではないか。

 那覇空港の環境影響評価では、飛翔高度確認個体数でみると10メートル以下の飛翔が全体の65%を占め、ほとんどが50メートル以下の高度で飛翔していたとされており、空港周辺(場周経路)で高度300メートル以上を飛行する自衛隊機が水鳥に与える影響は小さいと推測される。

 【(19)民間空港としての佐賀空港の仕様・発展への影響】

 -佐賀空港の民間空港としての発展に影響を及ぼすのではないか。

 佐賀空港の10年後の国際線、国内線の目標が達成された場合でも空港の利用可能時間を超えることはなく、民間空港としての使用に影響を与えない。

 民間機が特定の時間帯に集中的に離着陸を行う場合は、自衛隊機の離着陸を控える。自衛隊機は、民間機の定期便、チャーター便、遅延や早着、増便などがあった場合には、その運航を優先する。以上のことから、民間空港の使用、発展について特に問題はないと考える。

■影響の事例の報告がないと確認したもの

 【(8)下降気流による漁業への影響】

 -オスプレイなどの下降気流(風圧)が、ノリの摘み取りなどノリ養殖の一連の作業に影響を及ぼすのではないか。

 ヘリコプターの中で最も機体規模の大きいCH-47が配備されている木更津駐屯地周辺の海域で、下降気流によるノリ養殖への影響の事例はないことを木更津漁協に確認した。オスプレイのデモフライトの際、上周経路(飛行高度300メートル以上)直下の海上で風圧を感じることはなかった。

 【(12)下降気流による農業への影響】

 -オスプレイなどの下降気流(風圧)が、佐賀空港周辺の水稲、麦、大豆などの生産に影響(倒伏など)を及ぼすのではないか。

 防衛省は高度300メートル以上を飛行する回転翼機の下降気流による地表の農作物などへの影響が問題となった事例は報告されていないなどと説明している。県としてもヘリコプターが配備されている目達原駐屯地周辺で、風圧によって農業に問題が生じた事例の報告はないことを確認した。

■基準値や評価方法あるいは科学的知見などがないため評価できなかったもの

 【(4)低周波音による生活環境への影響】

 -オスプレイなどが発する低周波音が生活環境に影響を及ぼすのではないか。

 低周波音は基準値や評価方法が定められておらず、現時点で生活環境への影響について評価できない。

 【(7)騒音による漁業への影響】

 -オスプレイなどの騒音が、漁船漁業(コノシロ漁、シバエビ漁)や干潟漁業(ムツゴロウ、シオマネキ)に影響を及ぼすのではないか。

 佐賀で行われたデモフライトでは水中表層の音圧が測定できなかったことなどから、現時点で影響について評価できない。防衛省は影響の調査を検討しているとのことで、注視したい。

 【(11)騒音による農業への影響】

 -オスプレイなどの低周波音を含む騒音が、家畜の成育や品質に影響を及ぼすのではないか。

 自衛隊機の低周波音を含む騒音については基準が定められていないことから、現時点で家畜に与える影響について評価できない。

■県として評価する立場にないもの

 【(16)佐賀空港が攻撃の標的になることについて】

 -空港や周辺が外国から攻撃の標的になるのではないか。

 国防政策はまさに国の専管事項であるため、国は有事、戦争状態にならないよう、あらゆる外交的・政治的努力によって、その可能性を低減するよう努めていただきたい。

■有効性があると考えられるもの

 【(20)佐賀空港の防災拠点としての機能向上】

 -九州や西日本地域の防災拠点として佐賀空港の機能強化につながるのではないか。

 オスプレイは輸送ヘリより航続距離が長く、スピードも速いことから、配備された場合は九州や西日本地域で災害が発生した場合、速やかに展開させることが可能となる。佐賀空港の防災拠点としての機能向上に有効と考える。

このエントリーをはてなブックマークに追加