「焼き物という制約の中で、よりピカソの自由が光る」と作品を評する塚本さん。右が「長い顔の長方形皿」=佐賀市の県立美術館

■画家 塚本猪一郎さん(佐賀市)

制約の中で際立つ自由

 「ピカソ展」は佐賀県立美術館で7月17日まで(月曜休館)。当日券は一般1200円、高校生以下無料。

 会場に入った瞬間、心を射抜いたのはこの皿だった。ピカソといえば絵画の限界を打ち破った人物だが、焼き物や版画においては彼の自由さがより際立って感じられる。それはキャンバス以上に制約がある芸術表現だからだろう。抑圧の中でこそ、自由を求める精神は発揮される。

 青を基調とした抑えた色使いが、造形のたくみさを強調する。特に目。頬など顔のラインが彫って描かれる一方、あえて土を盛って凹凸をつけている。彼は自分が被写体となる時も、特に目の輝きや強さにこだわりを持っていたようだし、美術造形としての目に対する意識が顕著に表れていると言える。

 ピカソが陶芸に没頭したのは、南仏にある陶器の町ヴァロリス。そこでの素晴らしい陶芸家との出会いが彼の創作意欲をかき立て、この皿を生んだ。その足跡をたどろうと、約30年前に南仏を訪れたことがある。石畳の道がある小さな町で、しっとりとした雰囲気に包まれて-。その臨場感を現場で感じた経験があると、やはり感慨もひとしおだ。

 渡欧時に鑑賞したピカソやマチスら“20世紀最後の巨匠”の作品は、テクニカルな面より「心を打つかどうか」で芸術を見る、という物差しを僕に植え付けてくれた。それ以来、作為的な芸術に魅力を感じなくなった。僕の中で特別な存在であるとともに、人類史上最大の画家だと思う。

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