沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、沖縄県は工事の差し止めを求めて提訴、判決まで工事を中断させる仮処分も併せて申し立てた。政府と県の対立は再び法廷闘争に入る。

 辺野古移設に関しては、前知事が行った現場海域の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事の処分について政府と県が訴訟で争った結果、昨年12月、最高裁で県側敗訴の判決が確定している。

 県側は今回、最高裁判決後の動きとして、政府が知事の許可を得ずに漁業権が設定された海域で海底の岩石などを壊す「岩礁破砕」を行うのは違法だと主張し、新たな訴訟に踏み切った。

 これに対して政府は、県の訴えは不適法で、許可も不要だとして全面的に争う構えだ。菅義偉官房長官は確定判決に従い「誠実に対応する」とした昨年3月の和解条項を挙げ「県の提訴は残念だ」と述べた。だが最高裁判決は埋め立て承認を巡る行政処分の是非を判断したにすぎない。

 この問題は司法の場でいくら手続きの法律論を詰めても事態は解決しないだろう。総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は2016年6月、政府と県の双方に解決に向けた協議を促した。しかし十分な話し合いのないまま政府側が訴訟に持ち込んだ経緯がある。

 係争委は「普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向け、真摯(しんし)に協議し、納得できる結果を導く努力をすることが解決への最善の道だ」と指摘した。理解できる提言だ。その原点に戻り、政府は誠意を持って県と協議するよう求めたい。

 その際には、沖縄の基地問題の歴史にあらためて思いを巡らせるとともに、安全保障環境の変化や安全保障関連法による日米連携の深化を踏まえ、在日米軍全体の在り方を抜本的に再考し、辺野古基地建設の必要性を議論すべきだ。

 政府と県は15年にも約1カ月間、工事を中断して集中協議を行った経緯がある。しかし翁長知事が戦後、土地が強制収用されて米軍基地が造られた歴史から訴えたのに対し、安倍晋三首相は1996年の日米の普天間返還合意が原点だと主張し、かみ合わなかった。

 沖縄は第2次大戦末期に悲惨な地上戦を経験し、その後に強制的に米軍基地が造られた。さらに新たな基地を造るという計画に多くの県民が反対するのは当然ではないか。

 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で緊張が指摘される安全保障環境への対応も冷静に考えたい。北朝鮮は弾道ミサイル発射訓練の目標を在日米軍基地だと明言し、米本土が射程に入る大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発にも成功したと主張する。今後、米軍の在外配置の見直しが課題に浮上しよう。

 一方、日中両政府は最近、関係改善へ動きだしている。こうした情勢の中で辺野古に大規模な基地を造り、固定化する必要があるのか。在日米軍の在り方の見直しに関して、政府は米政府へも議論を働き掛けるべきだ。

 安倍政権は翁長知事への損害賠償請求もちらつかせて圧力をかける。来年1月に予定される名護市長選と来年秋の県知事選で移設反対の現職を破ることにも力を入れている。しかし地方選挙への過剰な介入は対立を深めるだけだろう。地元の声に謙虚に耳を傾ける姿勢を政府に求めたい。(共同通信・川上高志)

このエントリーをはてなブックマークに追加