沖縄県名護市安部の海岸に近い浅瀬で大破したオスプレイ=14日午前7時4分(共同通信社機から)

 米軍普天間飛行場所属のオスプレイが海岸近くで大破した衝撃的な事故は、同飛行場の辺野古移設で政府と対立を深める沖縄の怒りを一気に増幅させた。訓練場の部分返還や沖縄以外での機体整備など「負担軽減」を進めてきた政府から見れば「最悪のタイミング」(政府関係者)。日米両政府は異例の早期対応で「墜落ではない」と強調し、火消しを図るが、信頼回復に向けた道筋は見えないままだ。

▼人為ミス

 「米軍の説明では、人命に影響を与えないよう浅い海に不時着した」「意図してその場所に降りた」。事故から一夜明けた14日午前、沖縄県庁の知事応接室。翁長雄志知事と向き合った防衛省幹部は、機体がバラバラになった状況が判明しても「墜落」ではなく「不時着」だと繰り返した。

 政府が火消しに奔走するのには理由がある。22日に沖縄県東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場の部分返還が控えているためだ。「本土復帰後、最大の返還」(安倍晋三首相)をアピールし、県と対立が続く普天間移設問題の打開につなげたい狙いがある。

 米軍も歩調を合わせた。空中給油を受ける訓練中に機体が不安定になった「人為ミス」との見方を早々に表明。事故からわずか半日で米軍が原因を明らかにするのは「極めて異例」(防衛省関係者)だ。機体の安全性を疑問視する声が高まれば、訓練場返還の実績も一気にかすむ。日米両政府の対応には、強い危機感が露骨に表れている。

 ただ返還は、オスプレイが運用されるヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)を訓練場内に建設する条件付き。翁長氏はオスプレイ配備撤回を公約に掲げつつも、基地の返還自体は進めるべきだとの考えに立ち、ヘリパッド付きの返還に明確な賛否を示してこなかった。

 さらに、辺野古移設を巡る政府と沖縄県の訴訟で、最高裁が弁論を開かないことを決め、20日に県側敗訴が確定する見通しとなった。翁長氏の求心力低下を懸念する声も漏れ始めていた。

 しかし今月に入りオスプレイが何らかの物体をつり下げながら民家上空周辺を連日飛行したことが分かり、県民の不安が強まった。そこに起きた今回の事故。翁長氏は反対姿勢を強め、この日記者団に「危険なオスプレイを運用されることは極めて問題だ」と強調。関係者は「県民の反基地感情に再び火が付いた。民意を後ろ盾に反転攻勢に出る」と予測した。

▼厳しい表情

 事故の衝撃は沖縄以外にも波及した。

 「原因がうやむやなままでは(受け入れ可否の判断は)あり得ない」。佐賀県の山口祥義知事の表情は厳しいままだった。防衛省は陸上自衛隊が導入予定の17機に関し、佐賀空港への配備受け入れを県などに求めている。米軍の定期整備が来年1月から予定されていた陸自木更津駐屯地の地元の千葉県と木更津市も、安全確認ができるまで整備を見合わせるよう防衛省に要望した。

 日米両政府はこれまで、航空イベントでの地上展示や熊本地震での物資輸送にオスプレイを投入するなど、安全性や有用性を繰り返し強調してきた。「ある程度の手応えは感じていた。このまま一気にいけると思っていたのだが…」。ある防衛省幹部の言葉に、オスプレイの存在そのものに不安を感じている民意との「ずれ」がにじむ。

 早急に幕引きを図り、オスプレイの運用実績を積み重ねたい日米両政府。意識の乖離(かいり)に気付かないまま進む道は険しさを増す。【共同】

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