自殺者遺族の話に耳を傾ける相談員の吉木園枝さん(奥)=佐賀市内

■傷心救う「ハートの海」

 ボランティア団体「佐賀いのちの電話」による自殺者遺族への支援活動が4月で10年を迎える。大切な人を失った者同士、悲しみを分かち合う集いを毎月開いてきた。専門の相談員も配置し、遺族が胸にしまい込んでいる思いを吐露できる受け皿になっている。

 「ハートの海」と名付けた集いは毎月第4土曜の午後1時半から2時間、佐賀市のアバンセで開いている。2016年末までの計127回で65人が参加した。来訪者がない日も多いが、相談員の吉木園枝さん(76)は「待つのが仕事。そこにあるということが大事ですから」と話す。

 2006年に制定された自殺対策基本法は自殺を社会の問題と捉え、行政の責務として遺族支援を盛り込んだ。佐賀県は自殺予防の電話相談をしている「佐賀いのちの電話」に業務を委託した。07年4月から相談員の研修を実施し、11月から活動を本格化させた。

 当時、全国の年間自殺者数が3万人を超えて社会問題になった。県内でも毎年250人を超えていた。対策の効果もあり、16年は147人まで減ったものの、遺族支援の必要性が薄らぐことはない。

 自殺者の遺族は消えることのない自責の念に加え、自殺や心の病に対する偏見もあり、つらい思いを一人で抱え込む傾向が強い。集いの場を訪れるようになるまで何年、何十年と歳月を要する人が多いという。

 「30年前に自殺した父に『バカヤロウと言いたかった』と言って、その場で叫んで気持ちにひと区切りつけた男性もいました」と吉木さん。ある女性は、夫の三回忌を終えた後に初めて訪れ、2年前の火葬場で手に取った広報用のカードを「いつか訪ねよう」と思いながらずっと持っていたという。

 現在7人いる相談員は傾聴のトレーニングを積んでおり、思いの丈を語ってもらうように心掛ける。15年前に長男を亡くした後、しばらくアルコール依存症になっていた佐賀市の女性(73)は「じっと耳を傾けてくれたので、話しながら心の整理をつけることができた。家族だと途中で意見されるので、なかなかそうはいかない」と話す。

 吉木さんは「1人の自死で多くの人が心に深い傷を負うことを考えると、ここにたどり着けたのはほんの一部。もっと多くの人に存在を知ってもらいたい」と望んでいる。

 「佐賀いのちの電話」への問い合わせは、電話0952(34)4186。広報活動に充てる資金が足りず、寄付も呼び掛けている。

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