研究会の後、持ち寄った吟醸酒を酌み交わし、語り合う=7月、福岡市内

 酒造りは暦年度をまたぐため酒造年度を用いる。7月1日から6月30日までの1年が日本酒業界の年度である。この時期になると、私たちは家業の傍ら次の造りに向けて活動を始める。

 九州酒造杜氏組合は毎年7月、吟醸酒研究会を開いている。先進地の大先生や名杜氏を迎えて講演会を開催したり、全国新酒鑑評会で受賞した管内の杜氏や指導者の話を聴いたりする。

 研究会の後は場所を居酒屋に移して懇親会が用意され、各社から自慢の吟醸酒を持ち寄って酌み交わす。杜氏、蔵人同士、ざっくばらんに情報交換し、語り合い、旧交を温める。とても有意義な交流の場となる。

 8月には杜氏組合と各県の酒造組合が共催で夏期酒造講習会を開催する。ちょうど次の造りに向けて蔵人と蔵元が意志疎通を図る頃で、講習会も熱気を帯びてくる。

 内容は国税局の鑑定官室と各県の指導機関の先生、杜氏組合が打ち合わせ会で決める。時には税務署、警察署、消防署の専門家の話を聴くことも。そう言えば、昔、和尚さんの法話を拝聴したこともあった。

 今回、わが肥前支部は「一献の系譜」という酒造りの映画を上映する。石川県能登半島を出身とする酒造りの技能集団「能登杜氏」。彼らの夏は漁業や農業にいそしみ、農閑期となる冬、現金稼ぎのため仕事を求めて働きに出たことが、酒造りの始まりだった。肥前杜氏と重なるところが随所に映し出されることだろう。

 いのうえ・みつる 1951(昭和26)年、唐津市肥前町入野生まれ。「肥前杜氏」として半世紀にわたり酒造りに携わる。現在、有田町・松尾酒造場(宮の松)に勤務。九州酒造杜氏組合長。

このエントリーをはてなブックマークに追加