右後方にある「女の肖像の楕円皿」など、ピカソ作品の目の開き方や位置に着目した德安和博さん=佐賀市の県立美術館

■彫刻家、佐賀大教授 德安和博さん

「内触覚性」素直に表現 

 人間には内触覚性というものがある。物を飲み込むときに生じる喉の感覚などであり、例えば目の見えない人が彫刻を作った場合、首が太く、手が大きくなるのは感覚を素直に、リアルに表現したからだ。

 我々にも同じ感覚があるが、普段は目に見えた大きさや形に支配され、それを現実として捉える。しかし、目の見えない人にとっては、その太さが現実で、見た目の太さはリアリズムにつながらない。英国の美術評論家、ハーバード・リードの言葉を思い出した。

 展示でピカソの肖像写真を見ている時、ある事に気付いた。例えば「女の肖像の楕円皿」で目の開き方、位置関係に着目してほしい。向かって左が大きく、右がやや閉じ気味である。

 特定のモデルを使わず、速写的な表現の場合、対象はピカソと同じような“目”をしている。私自身もそうだが、モデルを使った場合でも作者である自分の顔や体型に似てしまうことがある。これも内触覚性が関係している。

 他人の肖像などある程度のコントロールが必要だが、自由に描いた作品は似せるとこからの開放がある。「5人の牧神の長方形皿」、水彩の「男の顔」など多くの作品で目の開き方、位置関係がピカソ本人に似ており、彼の内触覚性について想像をめぐらせることができて興味深かった。また、図録や全集で見たことのない彫刻作品もあった。初期の手業で、きっちりとした仕事を見ることができたのも貴重だった。

 「ピカソ展」は佐賀県立美術館で7月17日まで(月曜休館)。当日券は一般1200円、高校生以下無料。

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