タマネギはニンニクと同じように歴史が古く、紀元前4千年ごろから食べられていた。古代ギリシア人も盛んに食したらしい。当代一の文化都市だったアテネでさえも、劇場や広場など至る所でこのにおいが満ちあふれていた◆スタミナ食として兵食にも欠かせない野菜で、男たちは招集がかかると、タマネギやチーズのほか、イチジクの葉で包んだ塩漬けの魚などを自前で調達して兵舎に駆けつけたという(塚田孝雄著『食悦奇譚(しょくえつきたん)』)◆世界各地を食べ歩いた作家の檀一雄は、フランスの町々の食堂で、オニオンスープをすする時ほど楽しいことはないとエッセーに書き残している。あくまでタマネギは庶民の食べ物なのである。日本には明治初年に入り、後に北海道で本格的に栽培された。もう外来野菜と呼ばせないほど、私たちの食生活になじんでいる◆佐賀の白石地方では今、春の使者である極早生(ごくわせ)タマネギの収穫が真っ盛りだ。今月10日ごろまでの旬の産物である。貯蔵せず、すぐに出荷するのでみずみずしく辛みが少ない。サラダなど生だとシャキシャキの歯触り感と風味が抜群である。もちろんオニオンスープにすれば、甘みが際立つ◆昨年は、べと病の大被害にあった。今季はいろんな対策をしての栽培だ。農家の思いのこもった大地の恵みは、いつにもまして舌を満足させる。(章)

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