九州新幹線長崎ルートのフリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)導入をめぐり、JR九州が「現時点では困難」として断念する考えを表明した。安全性と経済性の両面から課題があるとしており、FGT計画は根幹から覆された格好だ。

 与党のプロジェクトチーム検討委員会に出席したJR九州の青柳俊彦社長は、開発の遅れに加えて、採算性を断念の理由に挙げた。一般の新幹線に比べて車両関連のコストが2倍近い上、JRの負担が年間50億円も増えるという試算を示し、「収支採算性が成り立たない」としてフル規格へ転換すべきとの考えを強くにじませた。

 なぜ、ここにきてはしごを外すような話が出てくるのか、理解に苦しむ。すでに長崎ルートは武雄温泉-長崎間の新幹線区間工事が着々と進んでおり、もはや引き返すわけにはいかない。

 そもそも、FGT開発の技術的なハードルの高さは、当初から指摘されていたのではなかったか。1997年に開発に着手して以来、これまでに約500億円の国費が投じられてもいる。

 開発のめどがたたないにもかかわらず、見切り発車したつけがまわってきたのではないか。長崎ルート計画には懐疑的な声も根強かったが、国内初の“夢の技術”であるFGT導入による誘客効果などメリットばかりが強調されてきた。沿線の自治体もFGTを前提にしたまちづくりを計画しており、影響は小さくない。

 やはり、いったん立ち止まって、責任の所在をはっきりさせるべきではないか。当初の計画に甘さはなかったか。FGT開発が遅れた原因はどこにあるのか。巨額のコストと時間が費やされてきた以上、きちんとした総括が欠かせないのではないか。

 焦点は、FGTに代わる運行形態をどうするかに移る。今回のJR九州の見解はあくまでも事業者の意見であり、今後の方針は政府が決めるが、いったん白紙ベースから考え直すべきだ。

 というのも、日本は本格的な人口減少時代に突入しており、将来的にどれほどの需要が見込めるかは疑わしいからだ。

 仮にフル規格化する場合、着工済みの区間と合わせて1兆円規模の投資になるという。これほど多額の投資に踏み切ったとしても、利用者数がじり貧では将来世代の重荷になる可能性もある。

 特に佐賀県にとっては、現在の225億円の負担が、800億円規模にまでふくらむという試算もある。佐賀県民にとっては時間短縮効果が極めて乏しく、巨額の財政負担に理解が得にくい。

 与党プロジェクトチームは、28日にも佐賀県や長崎県から意見を聞き取る。佐賀県の副島良彦副知事は「県の財政状況をみると(フル規格化を)議論する環境にない」と伝える方針だが、沿線に当たる嬉野市や武雄市などからはフル規格化を求める声も上がっている。

 これまでの経緯を踏まえれば、佐賀県としては新たな財政負担に安易に応じるべきではないだろう。2022年度の「リレー方式」での暫定開業をにらみつつ、将来的にはどのような選択肢がありうるのか、佐賀県民にとって最善の道は何かを探ってもらいたい。(古賀史生)

このエントリーをはてなブックマークに追加