総務省が31日に公表した住民基本台帳に基づく2016年の人口移動報告によると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は、転入者が転出者を上回る「転入超過」が11万7868人だった。前年より1489人少なく、5年ぶりに減少したものの、転入超過は21年連続となった。一極集中に歯止めがかかっておらず、東京圏への転入・転出を20年に均衡させる政府目標の達成は困難な状況だ。

 都道府県別で転入超過は東京圏と愛知、大阪、福岡の計7都府県のみ。残りの40道府県が転出超過だった。沖縄も転出超過に転じた。

 総務省の担当者は「特に千葉県のベッドタウンなど、子育て支援に力を入れている地域への人口流入が目立つ。東京圏以外では企業や大学の多い大都市に人が集まっている」と説明した。

 転入超過が最大だったのは東京の7万4177人で、千葉1万6075人、埼玉1万5560人と続いた。転出超過は北海道の6874人が最大で、熊本の6791人、兵庫の6760人の順だった。佐賀は転出超過数2300人だった。

 熊本は昨年4月の地震が影響したとみられる。熊本からの転入が増えた福岡は、転入超過が5732人へ拡大した。

 東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)はいずれも転出超過で、超過数は岩手3870人、宮城483人、福島5839人だった。

 全市町村の7割以上が転出超過となり、北九州市、長崎市、熊本市の順に多かった。転入超過は東京23区が最大で大阪市、札幌市が続いた。

 三大都市圏のうち、名古屋圏(愛知、岐阜、三重)は2363人、大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)は9335人の転出超過で、どちらも4年連続となった。【共同】

=ズーム=

■人口移動報告 自治体間の住民の移動状況をまとめた統計。住民基本台帳法に基づき、転入者の住所地や性別、年齢などを集計している。市区町村をまたいで住所を移し、転入を届けた人が対象。引っ越しても届け出ていない場合や、同じ市区町村内で引っ越した人は反映されない。総務省統計局は毎月データを発表し、毎年1~2月に前年1年間の結果を公表。行政施策や、人口移動に関する研究分析の資料として活用されている。

 地方創生決め手欠く 東京五輪で流入再加速も

 人口減に拍車

 地方から人口の流出が止まらない。地方創生を目指し、安倍政権が新たな組織を設けて2年半。2016年の人口移動報告によると、東京圏に人口が集中する構図はほぼ変わらず、対策は決め手を欠いている。国内外から大勢の人が集まる20年東京五輪・パラリンピックに向け、一極集中が再び加速することも予想され、政府は対応の見直しを迫られそうだ。

 日本有数の豪雪地帯、山形県尾花沢市(人口約1万7千人)。転出者数から転入者数を差し引いた16年の「転出超過」は236人で、前年の161人から増えた。10~20代で進学、就職のため転出した人の多くは戻らず、人口は減る一方だ。市は婚活支援、ウインタースポーツなどを売りにした若者らの移住促進に取り組むが、実績はわずか。逆に、毎日の雪かきは重労働で、市担当者は「『高齢になったら住みづらい』と出て行く人もいる」とこぼす。

 山林がほとんどを占める島根県美郷町も人口流出が続く。総務省の支援で特産品開発などをサポートする「地域おこし協力隊」として一時的に暮らす若者もいるが、任期後に定住する人は少数派だ。「仕事を選べず、どんどん町外へ出て行ってしまう」と町の担当者。18年4月1日には広島と結ぶJR三江線が廃止され、不便さから人口減に拍車がかかると心配する。

 人口減で自治体の半数は将来、消滅する恐れがある-。政府の対策は、民間団体が14年に公表した衝撃的な試算が発端だ。担当相や専門組織を置き、14年度にまず5カ年の総合戦略を決定。15年度には、東京から本社機能を移転させた企業の減税制度を作った。

 しかし、経済産業省によると、適用が決まったのは16年末時点でわずか12社。取引先、消費者が集まる東京の利点を重視する企業は多い。石破茂・前地方創生担当相が「国が模範を示す」と打ち出した中央省庁の地方移転も、各省庁が激しく抵抗。文化庁の全面的な京都移転が決まっただけだ。

 17年度の政府予算案は目玉となる対策は見当たらず、手詰まりの状態。政府関係者は「五輪を控え、一極集中はさらに進む可能性がある」と漏らす。

 そのまま就職

 自治体担当者が口をそろえて指摘するのは、進学をきっかけとする若者の流出だ。

 長野県によると、16年4月に大学・短大に進んだ県出身者約1万1千人の74%は県外へ。その半数程度は東京圏に進学した。一方、県外進学者の「Uターン就職率」は10年度の卒業者は44%だったが、15年度は38%に落ち込んだ。県担当者は「学生は大学の多い東京圏に流れる。雇用情勢の改善もあり、そのまま就職する傾向が強まっている」と分析する。

 全国知事会は昨年、東京23区の大学・学部の新増設抑制、地方の大学支援を求めて緊急決議。「将来の地域経済を支える若者の東京集中に歯止めをかけるべきだ」と訴えている。政府は夏までに方向性をまとめるが、日本私立大学連盟会長を務める鎌田薫・早稲田大総長は「新増設の抑制は教育の発展を阻害し、学問の自由の不当な抑制につながる」と反論。「就職で東京に来る若者も多く、一極集中是正の観点からも弥縫(びほう)策にしかならない」として、地方の雇用創出にこそ力を入れるべきだと話している。

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