着物の柄を参考に描く中島誠子さん。繊細な筆遣いで柔らかく立体的に表現する=武雄市山内町の作業場

ひよこなど「かわいい系」を手掛けるなど、体調を考えながら制作を続け「できることを増やしたい」と話す

自然の色使いに情熱

 細い筆で絵の具を寄せ集めるように盛り上げていく。「つけだみ」と呼ばれる技法で、鶴の白い羽根を一枚一枚、丁寧に塗り上げる。「柔らかくて立体的に見える。好きな表現」と笑顔を見せた。

 作業は細い筆を使うことが多い。自然を繊細に表現するには欠かせないと感じている。「自然の中では一本の枝でも微妙に色が違う。その色使いを再現したい」と話す。

 有田町生まれ。中学卒業と同時に、有田工業高定時制に通いながら窯元で働き始めた。以来、佐賀県窯業試験場(現・窯業技術センター)で下絵付けを学び、有田工業高研修生としてろくろ技術を身につけながら、窯元数社で経験を積んだ。

 40歳で柿右衛門窯に入社した。絵の具の摺(す)り方にも気を配り、余暇もスケッチを続けたり日本画を学ぶ先輩たちの姿に伝統の窯の重さを感じた。先代の十四代柿右衛門さんから言われた「時間が掛かってもいい物を作りなさい」と、余白を大切にという意味の「白を描きなさい」という言葉は、今も心に刻んでいる。

 ずっと憧れていた十二代柿右衛門さんの「柔らかくすっと描いた線」に近づこうと努力を続けてきた2年前、それまでの暮らしが一変した。交通事故に遭い、後遺症で手が震えるようになった。柿右衛門窯を休職後に退職した。

 思うように腕が動かなくなった自分にいらだち、休職当初は「外に出るのも人に会うのも嫌」だった。しかし、徐々にもう一度筆を持ちたいという気持ちが高まった。

 「手が震えるなら震えるなりの表現を考えればいい。そう思ったら気持ちが明るくなった。左手で描く練習もしたけど、だめだったからね」と笑い飛ばす。

 今は「腕と相談しながら」筆をとる毎日。絵の具を工夫し、こまめに休息をとりながら机に向かう。試行錯誤を続ける中で、震えることが少ない筆の動かし方も見つけた。ひよこや童画など「かわいい系」の絵を描くこともある。

 柿右衛門窯をはじめ、窯元を渡り歩く中で身に付けたさまざまな技法も支えになっている。「焼き物も絵を描くのも大好き。少しずつでもできることを増やしたい」と、明るく前を向く。

 なかしま・せいこ 1952年有田町生まれ。72年有田工業高定時制デザイン科卒。1988年一級技能士。91年陶磁器絵付職業訓練指導員。92年柿右衛門窯入社、伊万里・有田焼伝統工芸士(上絵付け)認定。2016年柿右衛門窯退社。武雄市山内町宮野91-106。電話0954(45)4318。

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