生け花には“背骨”がある。「真(しん)」と呼ぶ。戦国時代を生きた初代池坊専好(いけのぼうせんこう)を描いた映画「花戦(はないく)さ」が、あす封切られる。専好を演じる狂言師の野村萬斎さんを福岡で取材すると「生け花の真と対峙(たいじ)して僕の背骨がある。いわば、僕自身が生け花みたいなものでしてね」と語ってくれた◆世の安寧を願いながらひたすら花を生ける専好は、京都・六角堂の僧。ただ花を生けていれば幸せという男が、暴君と化した天下人、豊臣秀吉と向き合う。秀吉役は歌舞伎の市川猿之助さんで役者はそろった感がある◆映画はさまざまな生け花に加えて、凛(りん)とした千利休の茶、そして水墨画と、日本美に彩られる。そこに息づく精神を、萬斎さんは「全てを盛り込まないで、余白がある、ということ。その余白を観(み)る側が埋めて、初めて完成する」と語る◆昨年大ヒットした映画「シン・ゴジラ」。まがまがしくも神々しい巨大ゴジラは圧巻だったが、実はあのゴジラ、萬斎さんの動きをコンピューターで取り込み、スクリーンに再現したものだったとか。まさに影の主役。「伸びた背筋は、狂言師の習い性。そのまま、すーっと水平移動していくことで、ゴジラを神に近いもの、侵さざるものとして表現した」◆話に聞き入っていたら一転、にやり。「これぞ狂言師の“シン”骨頂かと」。呵々(かか)と笑った。(史)

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