佐賀県に対して国へ全線フル規格化を働き掛けるよう申し入れた嬉野市の谷口太一郎市長(中央)と武雄市の小松政市長=21日、佐賀県庁

■「リレー方式」長期化懸念

 JR九州がフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の「導入断念」を表明し、整備の行方が一気に不透明になった九州新幹線長崎ルート。「最大のハードルは財源問題。建設費のスキーム(枠組み)見直しができるかどうか…。地元としては今後の方向性とスケジュールを早く示してほしい」。全線フル規格化を求める武雄市の小松政市長は課題を挙げる。

 14日に国交省が2022年度の暫定開業時にFGT導入が困難との見解を示して以降、フル規格化を望む武雄、嬉野市は、市長や市議会議長らが休日返上で県や国会議員を回って国への働き掛けを要請した。流れはFGT以外の選択肢の検討に向かいつつある。「ここでフル規格化の機運を醸成しておきたい」

■県負担800億円

 フル規格化には財源問題が大きく立ちはだかる。長崎ルートを含む整備新幹線の財政負担は法定の枠組みがあり、国が3分の2、地元自治体が3分の1を拠出する。その枠組みに沿って試算すると、佐賀県の追加負担は約800億円に上る。巨額の負担に副島良彦副知事は「議論する環境にない」と重ねて否定、「法を変えるまでの見通しが立たない」とまで言及した。

 「FGTの開発遅れの責任は佐賀県にはない。国の責任で特例としてスキームを見直すべき」。武雄、嬉野の市議からは、こんな声が聞こえてくる。「高速道路沿いのルートなら用地買収費も抑えられ、800億円という数字も変わる」との指摘もある。

 ただフル規格化の問題は枠組みだけにとどまらない。約5千億円ともいわれる追加費用の財源を国がどう確保するか、さらに一定の費用対効果がなければ着工できないという前提条件もある。

■地域で温度差

 新幹線に対する考えに地域差があるのも事実だ。鳥栖市は「県の考えに沿う形でと思っている。その点でフル規格化を望む武雄、嬉野市とは異なる」(国道交通対策課)とし、財政負担がないFGTを容認する立場の佐賀市も「現時点で(フル規格化の)賛否についてコメントできない」(企画調整部長)と慎重だ。FGT以外の整備方針を考える場合、沿線自治体の同意問題が浮上してくる。

 こうした状況変化の一方、時短効果が薄く、乗り換えなしの関西直通もできない「リレー方式」が長期化する可能性は高まる。嬉野市の谷口太一郎市長は「暫定開業時と、いつになるか分からない全面開業時の2段階でまちづくりを考えることになる」と悩ましさを抱える。企業誘致や周辺市町との観光連携を念頭に「リレー方式では弱い」との職員の声も漏れる。

 「この夏はFGTをあきらめるという方向性になったとしても、即フル規格に、とまではならない」。与党検討委のメンバーである古川康衆院議員(佐賀2区)は議論の長期化も示唆する。「終着点」が見えないまま、関係者の期待と懸念は膨らんでいく。

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