稲田朋美防衛相が南スーダン派遣の国連平和維持活動(PKO)日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、混乱を招いた責任を取って辞任する意向を固めた。

 日報問題に関する防衛省の特別防衛監察の結果は28日に公表される。防衛省の組織ぐるみの隠蔽に稲田氏が関与していたのかが監察結果の焦点だが、それ以前に防衛省・自衛隊自体が混乱状態に陥っており、稲田氏が省内を掌握する文民統制(シビリアンコントロール)が機能していたのかが問われる事態となっていた。

 実力組織である自衛隊の混乱は由々しき問題である。8月3日にも実施される内閣改造の直前までこの事態を引きずった末の辞任の判断は遅すぎたと言えよう。

 稲田氏はこれまでも不適切な言動が相次ぎ、防衛相としての資質が疑問視されてきたが、安倍晋三首相は続投させてきた。この事態を招いた首相の任命責任も問われる。

 PKO日報問題では、昨年10月に防衛省が受理した情報公開請求に対して当初、「陸上自衛隊で廃棄済み」として不開示を決定したが、その後、陸自内部で保管していたことが判明。しかし非公表としたことが今年3月に明らかになった。

 複数の防衛省関係者は、陸自に保管していた事実を非公表とする方針を2月に稲田氏に報告し、了承を得ていたと明らかにし、陸自が防衛監察本部に提出した内部報告書には、稲田氏が非公表方針を了承していたことを記載していたという。

 一方、稲田氏は了承の事実を否定、3月の国会答弁では陸自での保管に関して「報告されなかった」と述べていた。

 稲田氏は25日の参院予算委員会の閉会中審査で「批判はあるが、私はシビリアンコントロールはきいていると考えている」と答弁したが、こうした混乱自体が統制の欠如と言うしかない。

 特別防衛監察の結果によって処分を受けるとみられる防衛省事務方トップの黒江哲郎事務次官と、陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長も辞任する方向だ。内部の信頼関係が崩壊した防衛省・自衛隊は、早急に体制を立て直す必要がある。

 稲田氏は衆院当選4回ながら、安倍首相によって政府や自民党の要職に起用され続けてきた。しかし防衛相としては不適格だったと言わざるを得ない。

 先の東京都議選では自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言。自衛隊の政治利用と指摘され、撤回した。

 今月6日には、自衛隊が九州北部の豪雨で救助活動に当たっているさなかに約1時間10分にわたり「政務」を理由に防衛省を離れていた。指揮官としての自覚があったのか疑わしい。

 安倍首相はそれでも稲田氏を続投させた。参院予算委の閉会中審査でも、PKO日報問題に関し「徹底的な調査を行い、大臣の責任において徹底的に改善をし、再発防止を図ることで責任を果たしてもらいたい」と擁護。都議選での発言についても「演説を行ったその日に撤回し、謝罪した」と不問に付していた。

 内閣改造直前の辞意は、けじめをつけたとは言い難い。自らに近い人物に対するこうした甘い姿勢が安倍政権への不信、内閣支持率の低下につながっていることを厳しく認識すべきだ。(共同通信・川上高志)

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