歌舞伎でおなじみの廻(まわ)り舞台は、場面転換をたやすくできる仕掛けである。大道具(装置)を設(しつら)えたまま回転する。異なった場所で同時進行している出来事を切り替えて見せ、臨場感を出した演出が可能だ◆防衛省が舞台のこの問題も、そのまま廻り舞台に乗せれば、敏速な展開ができ、もっと早く決着がついたろうか。稲田朋美防衛相が閣僚を辞任した。南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、混乱の責任を取った形だ。遅きに失した感はある◆本人も粘り、安倍首相もかばった。しかし、ここにきて筋を書く人、演じる人、それぞれが幕引きに走ったようだ。「自業自得」との声は掛かっても、客席からの拍手は聞こえてこない◆廻り舞台のように表だけでなく舞台の裏もある。防衛省の表に出ないところでは、あってはならないことが起きていたようだが、公表された特別防衛監察の結果では、焦点の日報非公表への稲田氏の関与は認定せず、霧は晴れないまま◆たまらないのは登場人物に仕立てられた自衛隊員だ。これは芝居の世界ではない。日報問題は突き詰めれば生身の隊員の命にかかわること。真剣で嘘(うそ)のない仕事が求められる。場面は次の幕に移った。国益と国民の生活、そして日々懸命な自衛隊の活動にだけは、影響しない筋書きでと注文したい。(章)

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