「農園の価値と可能性を広げていきたい」と語る飯田正悟さん=福岡市博多区の福岡国際会議場

 僕は長い間、農園の役割は食料生産だけで、どれだけ効率のいい経営をできるかに尽きると信じていた。

 農業大学校を卒業後、若さと勢いに任せてアメリカへ渡った。そこで小規模農家の取り組みに注目した。農家は地域にサポートしてもらう形をとっており、農園は広く開かれていた。人々が自由に収穫できる畑や、畑を利用した子供たちのための迷路。人々との距離が近く、農園は一つの大きな家族のようだった。

 帰国して農業を始めた僕に、農園の価値や自分の仕事の本当の意味を教えてくれたのは一人の研修生だった。

 彼は体調を崩して仕事を辞め、3年ぶりに農園を訪れた。作業をしたら余計に疲れるのではと心配したが、元気に働き始め、数日後、笑顔でこう言った。「こんなにぐっすり眠れたのはいつ以来だろう」と。一緒に作業して、一緒にご飯を食べる-。彼がこの農園に家族の温かさを求めていたことに気付いた。農園は人と人を深くつなげ、誰かの支えになることができると誇らしく思えた。

 二つの体験を基に僕が提案する「ファミリーファームプロジェクト」は、次世代の育成と、農園の価値と可能性を広めていくことが目的。現在、農業をしながらアメリカに行く研修生に英語や農業を教えている。研修生の受け入れを積極的に行い、国際的な視野を持った次世代の農業者を育成したい。

 農園を開くことで農業の社会的価値は高まり、新たなビジネスにもつながっていく。特に取り組んでいきたいのは企業への「農業休暇」の提案だ。健康経営への取り組みとしても農園の活動は最適だと思う。農家同士がつながって互いに協力し合うことで、その効果は何十倍にも高まり、家族農園の可能性はどこまでも広がっていく。

 農園は人と人とを家族にし、つなげてくれる。何かに疲れた時や追い詰められた時に、いつでも帰ることができる優しい場所になることができたならと思う。

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