モスクワで共同通信との単独会見に応じるCIAのエドワード・スノーデン元職員(共同)

■共謀罪「個人情報全て暴く」

 米国家安全保障局(NSA)による大規模な個人情報収集を告発し、ロシアに亡命中の米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員(33)が1日までにモスクワで共同通信と単独会見した。元職員は持ち出して暴露した文書は全て「本物」と述べ、NSAが極秘の情報監視システムを日本側に供与していたことを強調した。

 日本政府が個人のメールや通話などの大量監視を行える状態にあることを指摘する証言。元職員は、参院で審議中の「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が、個人情報の大規模収集を公認することになると警鐘を鳴らした。

 元職員によると、NSAは「XKEYSCORE(エックスキースコア)」と呼ばれるメールや通話などの大規模監視システムを日本側に供与。同システムは、国内だけでなく世界中のほぼ全ての通信情報を収集できる。

 米ネットメディア「インターセプト」は4月、元職員の暴露文書として、日本に供与した「エックスキースコア」を使って、NSA要員が日本での訓練実施を上層部に求めた2013年4月8日付の文書を公開した。

 今年5月29日の参院本会議で、安倍晋三首相は文書を「出所不明」としてコメントを拒否したが、元職員は「(供与を示す)文書は本物だ。米政府も(漏えい文書は)本物と認めている。日本政府だけが認めないのはばかげている」と語った。

 元職員は共謀罪について「日本における(一般人も対象とする)大量監視の始まり。日本にこれまで存在していなかった監視文化が日常のものになる」と指摘。法案に懸念を表明した国連特別報告者に「同意する」と述べた。元職員は米軍横田基地(東京)の勤務経験もある。

 NSAは13年11月、漏えいした機密文書が「5万から20万点の間」に上ることを確認した。元職員はスパイ活動取締法違反容疑などで米当局から訴追されたが、監視社会の実態を警告した「内部告発者」として評価する声が高まっている。【共同】

■「市民、国家の家臣に」

 「大量監視で一般市民は国家の家臣となる」。黒ずくめの服に身を包んだスノーデン元職員は100分を超えるインタビューに応じ、各国政府の個人情報収集活動に警鐘を鳴らした。国家機密を暴露した自身の行動については「死ぬほど怖いことだが、価値はある」と振り返った。

 欧米だけでなく、日本などで個人への監視が強まっていると憂い、世界は「歴史的転換点に差し掛かっている」と指摘。現状を放置すればテロ対策を名目にした「暗い」監視社会が待っている-。身ぶりを交えながら、口調を強めて警告した。

 口元にうっすらとひげをたくわえた元職員。母国からは「裏切り者」との批判が上がるが、「米国は正義のために戦っていると信じる」と愛国心を強調、自分の活動は公益に資するとよどみなく語った。普段はネットで各国市民と交流しているといい「世界中と関係を築くことで帰国につながれば」と望郷の念ものぞかせた。

 携帯電話を持たない理由を聞くと、会った相手の情報まで筒抜けになる懸念があるからと説明。「衛星利用測位システム(GPS)を活用した地図が使えず、地下鉄駅から道に迷った」と会見に遅れた理由を苦笑いしながら語った。

=用語解説=エックスキースコア(XKEYSCORE)

 メールや通話の内容、ソーシャルメディアの利用履歴などの情報を収集する大量監視システム。米情報機関の国家安全保障局(NSA)などが使用している。極秘とされてきたが、スノーデン米中央情報局(CIA)元職員が2013年にその存在を暴露した。標的とする相手のネット利用に関する「ほぼ全て」の情報を収集できるほか、特定の単語を使用したメールなどを網羅的に集めることもできる。【共同】

=略歴=エドワード・スノーデン氏

 1983年6月21日、米ノースカロライナ州生まれ。2004年に陸軍特殊部隊員を目指したが、その後中央情報局(CIA)に雇われた。09年に民間会社社員として在日米軍横田基地内の国家安全保障局(NSA)に勤務。13年6月、NSAによる米国や世界規模での大量監視の実態を暴露した。同月ロシアに渡り政治亡命。米当局はスパイ活動取締法違反などの疑いで訴追。一方、監視社会の実態を警告した「内部告発者」として評価する声も高く、暴露に至る経過を描いた映画「スノーデン」(オリバー・ストーン監督)が、今年日本でも公開された。

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