全国15原発で過酷事故と地震などによる複合災害が発生した想定で、全住民が30キロ圏外に車で一斉に避難した場合の所要時間を交通権学会の上岡直見会長(法政大非常勤講師)が16日までに試算した。土砂崩れや地割れなどで通行機能が10%低下すると、移動完了までの所要時間は、最も長い原発で通常の3・6倍かかることが分かった。【共同】

 上岡会長は「熊本地震では、県が防災計画で緊急輸送道路に指定した主要な道路でさえ多数の通行支障が生じた」と指摘。原発周辺地域では複合災害を想定した対策が急務だ。

 30キロ圏は、自治体に避難計画の策定が義務づけられた範囲。試算によると、所要時間が最長だったのは国内で唯一稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県)で、道路機能に低下がない通常時22時間20分なのに対し、10%低下時は3・6倍の81時間10分だった。玄海原発(東松浦郡玄海町)は通常時21時間30分なのに対し、5%低下時は1・6倍の34時間、10%低下時は3・5倍の75時間だった。

 試算は東京電力福島第1、第2原発を除いた全国15原発を対象に行った。

=解説= 通行障害対策後手に

 原発事故と地震の複合災害を想定した避難時間の試算は、ただでさえ混乱が避けられない原発事故に地震被害も加われば、住民避難が一層困難になることを浮き彫りにした。しかし周辺自治体の対策は不十分だ。

 熊本地震では、大規模災害時の避難や救助、物資輸送への活用を想定した緊急輸送道路が大打撃を受けた。熊本県内に95路線ある緊急輸送道路のうち、少なくとも延べ20路線42カ所で通行止めが発生し、避難や復旧作業に大きな影響が出た。

 東京電力福島第1原発事故を受け、原発事故に備えた避難計画を策定する区域は従来の原発の半径10キロ圏から30キロ圏に拡大し、対象人口も大幅に増えた。関係自治体は避難先の確保などに注力せざるを得ず、複合災害対策まで検討が十分に進んでいないのが実情だ。

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