東芝が経営危機に瀕(ひん)している。不正会計問題の発覚後、経営再建を進めていたが、昨年末に米国の子会社の巨額損失が新たに判明した。一連の問題の背景にあるのが原発で、日本を代表する電機メーカーの屋台骨を揺るがしている。

 時計の針を戻したい-。おそらく、多くの東芝社員が考えているのが、原子炉メーカーでもある米企業「ウェスチングハウス(WH)」を買収した2006年ではないか。ほかの企業との競争で、6400億円の高値で買収したことが後の経営を苦しめた。

 原発の注文が増えることで、買収費用を取り戻せる算段もあったようだ。11年3月の福島第1原発事故を境にぴたりと止まった。それでも利益が出ているようにパソコンの売り上げなどを粉飾したが15年に発覚した。16年3月期決算は7200億円の赤字を計上し、業績好調な医療機器や白物家電事業を手放さざるをえなかった。

 高い“授業料”はここで終わるはずだった。しかし、16年末に米国の原発子会社が7千億円の損失を抱えていることが明らかになった。福島の事故後、米国でも安全規制は厳しくなり、受注していた原発の工事費が高騰したのが原因という。

 ただ、疑問点は多い。買収はWH社主導で15年12月に行われたというが、その時にはすでに不正会計問題は発覚している。なぜ、企業買収について本社が十分にチェックしなかったのか。ガバナンス(企業統治)のなさにあきれるばかりだ。このままでは債務超過となり、虎の子の半導体事業さえ、切り売りしなければならない。それは消費者が求める東芝の姿か。

 普通の企業なら、巨額損失の元凶である原発事業をすぐにでも手放すだろう。ただ、東芝は日立、三菱重工業ともに「国策原発」を担う。技術流出の問題もあり、簡単には許されない。さらに廃炉作業が進む福島第1原発には東芝の原子炉があり、国も最後まで責任をもった対応を求めるだろう。

 長期的には原発の保守点検を中心とする企業に様変わりする可能性さえあるが、多彩な能力を持った技術者を生かす企業となるように、ぜひ立ち直ってほしい。

 福島の事故後、原発に苦しむ企業は東芝だけでない。東京電力は事故処理費用21兆5千億円にあえぐ。海外をみれば、原発の需要減少により、ドイツのシーメンスが撤退し、フランスのアレバも経営危機に直面している。

 使用済み核燃料の最終処分場建設も、高速増殖炉を軸とする核燃料サイクルが行き詰まる中、待ったなしだ。原発はまだ発電コストが安い電力と言えるのか。ビジネスとしても転機を迎える。

 安倍政権は国内での原発新設が難しくなった今、新興国への原発輸出に力を入れる。その働きかけには東芝首脳の姿もあったという。一方で、日本は地球温暖化防止を目指すパリ協定への参加が遅れた。海外では太陽光や風力など自然エネルギーを増やし、脱原発が進んでいる。日本と世界で意識の差が出ていないか。

 東芝の経営危機は原発のリスクを軽視した見通しの甘さに原因がある。しかし、国も原発のビジネスモデルが揺らぐ現状を冷静に見極めないと、エネルギー政策を誤りかねない。東芝問題を教訓として受け止めたい。(日高勉)

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