ジャガイモは数奇な運命を持つ。南米アンデス山地が原産で、この地を征服したスペイン人が本国に持ち帰り、欧州に伝わったとされる。16世紀のことだ。しかし、なかなか普及せず、本格的に栽培したのが17世紀のアイルランド◆飢餓や戦乱で荒廃した土地に、少ない労力でも量がとれるこの作物はもてはやされた。ついには住民の3分の1が主食とするまでになったが、19世紀半ば、大発生した疫病で全滅。80万人以上が餓死し、アイルランド人の北米への大量移民につながったとされる(塚田孝雄著『食悦奇譚(しょくえつきたん)』)◆今では食卓で不動の地位を占めるジャガイモの収穫が、佐賀でも真っ盛りだ。唐津・上場地方が主産地で、梅雨前の今がかき入れ時。昨夏の相次ぐ台風上陸で北海道産が不作だった影響で、ポテトチップスが販売休止・終了になるものも◆ジャガイモは高値となり、心なしかカレーライスの回数も減った。農家にとって手塩にかけて育てて作物が一瞬で無残なことになってしまうのは、耐えがたいだろう。自然相手とはいえ、労に報いる収穫であってほしい◆ジャガイモも、べと病に悩まされたタマネギも順調に収穫が進むと、鯨のオバとともに煮る「肉じゃが」ならぬ「オバじゃが」、ゴロゴロ野菜が入るカレーも登板回数が増える。そんな笑顔いっぱいの食卓が待たれる。(章)

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