被害者支援を担当する警部の木下千嘉子さん。佐賀県警では女性幹部も増えてきている=県警本部

 佐賀県警が女性警察官の採用を始めて今年で四半世紀。県警が3日に佐賀市で女性警察官を対象に開くシンポジウムにちなみ、地域社会を守る日常や、直面している課題を見つめる。

     *

 同性の警察官の到着に安堵(あんど)したのか、被害者の女性は涙をこぼした。

 県警の警部補齊藤玲子さん(34)は交番勤務だった3年前、応援要請を受けた。路上を当てもなく歩き、男性警察官とは一切話さない50代の女性。憔悴(しょうすい)した様子に「何かある」と齊藤さんは直感する。パトカーの中で2人きりで話すと、夫からの暴行を打ち明けた。

 DV(配偶者らによる暴力)やストーカーを巡る対応で、警察が女性から相談を受けながら被害を防げない-。こうした問題が全国的に取りざたされてきた中、被害者の境遇を受け止め、安全が確保されるまでサポートする女性警察官がいる。県警人身安全対策室で現在、DVやストーカーの被害者の対応を担当する齊藤さんもその一人だ。

 相談した女性への配慮不足や、対応の後回しの一因として、男性優位の組織文化がやり玉に挙がってきた。加害者が身近で、子どもへの影響も心配して口をつぐむ被害女性は多い。齊藤さんは、1時間を超える悩み事の電話を受ける日もあるが、不安を拭おうと、とことん付き合う。

 「相手の気持ちを推し量りながら接するのが大切だし、今後エスカレートする恐れも伝えないといけない。同性だと、より理解し合えると思う」

 佐賀県警が女性警察官の採用を始めたのは1992年。男女雇用機会均等法(86年施行)の流れが警察にも及び、初年には5人が採用されて注目を集めた。現在は143人が勤務し、全体の8・4%を占める。25年がたち、幹部への昇任も増えた。現在は6人が警部になり、階級に占める割合は全国で2番目に高い3・7%になっている。

 県警被害者支援室の警部木下千嘉子さん(46)は、捜査部門から被害者支援の部署に異動した際、意識改革を迫られた。殺人事件の遺族から話を聞いたときだった。季節の花を見るたび、家族を失った時期と重ねて、記憶が呼び覚まされるという。「犯人を逮捕し、捜査を終えても、遺族は悲しみや苦しみをずっと抱えている。分かっていたようで、見えていなかった」

 事件直後に被害者と接する警察官。心情や接し方を理解していないと、二次被害を招いてしまう。被害者支援の重要性は高まり、今では捜査と「車の両輪」に位置付けられている。

 「暮らしへの目配りを含め、妻や母としての経験も仕事に生かすことができる」と木下さん。寄り添った被害者から「あなたに会えてもう一度、頑張ろうと思った」と感謝された経験が、別の被害者の声に耳を傾ける動機になっている。「女性の視点や感覚を警察に浸透させるのは、県民の共感を呼ぶことにもつながる」。こう信じている。

=さが女性警察官のいま=

このエントリーをはてなブックマークに追加