富士建が橋の点検などに活用しているドローン。人材不足が広がる中、九州経済白書も省力化につながる技術として注目している

 「人材不足」をテーマに九州経済調査協会が2日発表した2017年版九州経済白書。人材不足の背景には人口減という構造的要因があり、技術継承の遅滞や受注機会喪失などの課題克服に向けては、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を導入し、生産性向上を図る必要性を訴える。白書から佐賀県内の現状を読み解くとともに先進事例を紹介する。

■AI導入で生産性向上 

 県内の15年度平均の有効求人倍率は前年度を0・08ポイント上回る0・97倍で、6年連続で改善した。白書は「製造業や流通関連企業が多く立地する鳥栖が1・13倍とけん引するものの、(他県と比べて)求人水準は全体的に低い」と指摘。伊万里と唐津では求人増よりも求職者減によって倍率が押し上げられている傾向が強いとみる。

 昨年12月の統計をみると状況はさらに顕著で、県内全5地域で前年同月よりも求職者数が減少。高校生の県外就職率が4割を超えるなど、10~30代で転出者が転入者を上回り、人材不足に拍車が掛かっている。

■「悪影響」拡大懸念

 人材不足に関し、同協会が実施した企業アンケートによると、県内61社のうち16社が「悪影響がある」と回答。「今後悪影響が出る」は24社に上った。内容(複数回答)は「技術やノウハウ継承の遅滞」(41・4%)、「受注機会の喪失」(37・9%)が多く、今後については「従業員の心身の健康悪化」や「時間外・休日出勤の常態化」を懸念する声が目立った。

 不足原因(同)は「賃金水準」「賃金水準以外の労働条件」がともに21・3%で最多。大手や福岡都市圏との待遇格差を課題とみる企業が多くなっている。

■人の仕事代替

 限られた人材で生産性を高めている先進例として、白書は県内から、建設現場でドローンを活用している富士建(佐賀市)と、米IBMのAI「ワトソン」を使った社内問い合わせシステムを開発した木村情報技術(同)を紹介している。

 富士建はドローンによる空撮写真を3次元加工したデータから図面を作成。測量作業を効率化し、橋の点検などの高所作業にも活用している。遠隔操作で重機を動かすロボットも独自開発。国の普及促進事業に採択され、災害復旧現場への実用化が期待されている。

 木村情報技術のシステムは、総務やシステム管理者などの業務軽減を目的に、AIが事前に入力された想定問答データを基に音声で回答する。質問を受けるたびに学習して回答の精度が上がる仕組みで、一般顧客向けに導入する企業の活用も視野に入れる。

 白書は、将来的にはAIやロボットが人の仕事を代替する可能性に触れつつ、「付加価値を高める仕事に人を振り向け、人材枯渇に対処することが必要」と提言。経営者の人材マネジメント力とともに従業員の働き方の転換も求めている。

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 九州経済調査協会と佐賀銀行は21日午後1時半から、佐賀市の同行本店で九州経済白書の説明会を開く。同協会の田代雅彦調査研究部長が解説する。聴講無料。白書は当日、1部2500円で販売する。問い合わせは佐賀銀行総合企画部、電話0952(25)4553。

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