がんの親が子どもに伝える際に参考になる絵本を手にする大沢かおりさん

 妻の小林麻央さんの乳がん闘病を明かした記者会見で、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんは、幼い子どものそばにいられない母の苦悩や、不安を感じ取る子どもの様子も語った。「女性の12人に1人がなる」とされ、子育て中に発症することも多い乳がんを、わが子にどう伝えるか-。「きちんと話してあげたほうがいい」と専門家は助言する。

 「あのね、黙っていてごめんね。ママね、がんという病気ができておっぱいとっちゃったの」

▽「話してすっきり」

 日赤医療センター(東京)緩和ケア科の的場元弘部長が担当した30代の女性は、風呂で乳房摘出の痕を見せながら小学3年の娘にこう伝えた。女性は乳がんのことを言えないまま、手術から1年以上が経過。娘は手をつないであげないと眠れなかったり、不登校気味になったりしたが、伝えた後は1人で眠り、学校にも行くようになった。

 「自分でもどうなるか分からないし、娘が受け止められるかどうかも不安」と戸惑っていた女性だが、最終的には「話してすっきりした。何でも話せるようになった」と喜んでいたという。

 病気が分かった当初は親自身がショックを受けたり、治療のことで頭がいっぱいになったりして子どもに言いそびれるケースが多い。的場医師は「進行してしまった場合『今更どうやって…』と悩む親も多いが、伝えるのに遅すぎるということはない。状況に合わせて話して」と勧める。

 親ががんになった子をサポートするNPO法人「Hope Tree」代表で、東京共済病院がん相談支援センターの大沢かおりさんによると、隠すよりきちんと伝えるほうが子どもも落ち着くという。「ごまかしても、子どもは家の中で何かが起こっていることに気付く。変化の正体を知り、聞いたり話したりした方が不安は小さくなる」

▽絵本や冊子活用を

 伝え方は年齢や理解度に合わせ、子どもの疑問にはなるべく答えることが大切という。伝えるときに参考で見せられるような絵本や、医療機関で手に入る無料の冊子もあり、「活用してほしい」と大沢さんは話す。

 的場医師も、子どもを持つがん患者や家族向けに伝え方や留意する点などをまとめており、がんの痛みと緩和ケアに関するインターネットの情報サイトや、Hope Treeのホームページで近く公開する予定だ。

 的場医師は「まずは医療関係者向けに情報発信するが、退院後は医療関係者の目は届かない。両親や祖父母といった周囲の大人が正しい情報を子どもに伝え、話し合う環境が大切だ」と話す。【共同】

=乳がん=

 乳房周辺にできる悪性腫瘍で、多くは母乳を運ぶ「乳管」から発症。国立がん研究センターの2011年のデータによると、日本人女性が一生のうちに患うリスクは約9%。センターは16年に乳がんにかかるのは9万人で、06年の約4万9700人から約1・8倍に増えると推計。40代後半から50代前半が発症のピークだが、近年30代前半でも増えている。年齢や進行に応じて、抗がん剤やホルモン治療、手術による腫瘍切除などの治療法がある。

このエントリーをはてなブックマークに追加