ヘイトスピーチ対策法の施行から3日で1年を迎えた。部落差別解消推進法も16日で施行半年。法務省によると、昨年1年間のインターネット上の人権侵犯は、調査を始めた2001年以降、過去最悪の1909件(前年比10%増)で、ネット空間で差別が横行する実態が浮き彫りになった。西日本の一部自治体が独自に監視や削除に取り組んでいる。

 「在日とか部落系の会社教えてください」「福山の同和地区はどこ」。広島県福山市の人権・生涯学習課の職員が、ネット掲示板への書き込みを見つけた。高橋雅和課長は「こうした質問を放置すると差別を助長する。早めに芽を摘まなければ」。発見次第、掲示板管理者に削除を要請。00年に監視を始め、これまでに402件の削除を求め296件が削除された。

 兵庫県尼崎市もダイバーシティ推進課がネットの監視に当たる。橋本弘幸課長は「部落差別の書き込みは近年減っているが、『朝鮮に帰れ』などのヘイトは多い」と明かす。法務局に連絡し削除を要請している。

 大阪市は3月、ヘイトスピーチ抑止条例に基づき、ネット上の動画3件をヘイトと認定。13年に大阪市内であった在日コリアン排除を呼び掛けるデモや街宣活動の動画で、いずれも削除された。

 ネット事業者も問題を意識している。IT大手ヤフーは、ニュースのコメント欄に差別的な書き込みが多いとたびたび批判を受けている。同社の「禁止事項」に抵触したコメントは削除されるが、コメント数は1日平均22万件ある上に、差別表現と断定できないケースもあり、ヤフー広報は「全て削除するのは難しい」としている。

 「ヘイトスピーチ対策法と部落差別解消推進法は追い風だが、十分ではない」と話す福山市の高橋課長は「数が多くて全てに対応できない。間違ったネット情報を信じてしまう人も多く、監視する自治体が増えればいい」と期待を込めた。【共同】

 ■ヘイトスピーチ対策法

 国外出身者とその子孫への差別を助長する著しい侮辱などを「不当な差別的言動」と定義し「許されない」と明記した。国や自治体に相談体制の整備や教育、啓発を実施するよう求める。憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則はない。昨年5月24日に成立し、同6月3日に施行された。法務省は自治体に対し、「○○人は殺せ」「祖国へ帰れ」などの文言や、人をゴキブリなどに例える言動をヘイトスピーチの具体例として提示している。

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