記者会見でアーム・ホールディングス買収について説明するソフトバンクの孫正義社長=18日、ロンドン(共同)

 ソフトバンクグループの孫正義社長が「将来へ最も重要な賭け」として日本勢で過去最大の海外企業買収に踏み切った。先端技術を手に入れる好機とみて一気に交渉をまとめたが、借金を元手に買収を繰り返す手法は危うさもあり、投資家の不安を映して株価は急落した。一方、欧州連合(EU)離脱問題で海外からの投資縮小を懸念する英国政府にとって、今回の巨額買収は「渡りに船」となった。【共同】

 「ソフトバンクの創業以来、きょうが僕にとって最もエキサイティングな日だ」。英国で18日に記者会見した孫氏は、半導体設計の世界大手アーム(ARM)・ホールディングスを買収する意義を熱っぽく語った。

 ◆安い買い物

 会見の約2週間前、孫氏はトルコの港町のレストランで、バカンス中だったアームのスチュアート・チェンバース会長とひそかに会談。「そこでプロポーズ」(孫氏)し、電光石火で買収発表にこぎ着けた。

 孫氏が買収を提案した時期は、ポンドが対ドルで約31年ぶりの安値に沈んでいた。孫氏は否定するが、ポンド安が英国の有力企業を買収する追い風になった。中国系企業も今月12日、欧州で映画館を展開する英国企業を買収すると発表した。

 アームの半導体は世界にある大半のスマートフォンに使われており、孫氏は「10年前からお金さえあれば買いたかった」と強調。自動車や家電などがネットを通じてつながる「モノのインターネット(IoT)」が本格的に拡大すれば、アームの半導体は爆発的に伸びるとし「10年後は安い買い物だったと言われる」と胸を張った。

 一方、19日の東京株式市場では、ソフトバンクグループの株価が前週末に比べ10%以上も下落した。

 事業拡大に貪欲な孫氏は、ボーダフォン日本法人や米携帯大手スプリントなどの巨額買収を繰り返し、有利子負債は約12兆円まで拡大。「無謀な投資」との批判は絶えず出ていた。

 ◆「悲しい日」

 今年は一転して資産売却を急ぎ、2兆円近い現金を手にした。その使い道は「負債削減しか考えられない」(外資系証券アナリスト)との見方が多かったが、予想に反して負債をさらに1兆円程度増やす大型投資に打って出た。借金は売上高を大きく上回る約13兆円に膨らみ、経営の先行きを不安視する声は多い。

 ソフトバンクは過去に米半導体関連企業を買収したが、業績が伸びずに売却し、損失を計上したこともある。大手証券関係者は「孫氏はサービス分野の投資は得意だが、ものづくりには不安を感じる」と指摘する。

 今回の買収に関して、英国のハモンド財務相は「(英国企業が)国際的な投資家の魅力を失っていないことを示した」と歓迎した。孫氏は英国で雇用を倍増させる意向を示し、アームのチェンバース会長も「買収は大変魅力的なもの」と持ち上げた。

 これに対しアームの創業者であるヘルマン・ハウザー氏は18日、「私にとっても英国の技術にとっても悲しい日だ」と述べた。「英国は半導体の技術分野で何が起きるかを決めることはできず、日本が決めることになる」と先端技術の主導権を握られることへの懸念も示した。英メディアには「EU離脱(によるポンド安)の意図せぬ結果だ」と冷ややかな見方もあり、英国での受け止めは歓迎一色ではない。

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