トランプ米大統領が、地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。

 トランプ政権は既に、オバマ前大統領時代の国内の温室効果ガス排出規制撤廃や、発展途上国の温暖化対策を支援する国際基金への拠出中止を打ち出しており、ようやく動きだした世界の温暖化対策の今後に悪影響を及ぼすことが懸念される。

 米国は先進国最大の温室効果ガス排出国で、1人当たりの排出量も日本の1・7倍と多い。協定離脱は、国際社会や、温暖化の影響を受ける次世代の人々に対する責任を放棄するもので、受け入れられるものではない。

 日本を含めた他国は、あらゆる手段を使って米国に翻意を働き掛けるとともに、米国の姿勢にかかわらず、協定を尊重し、より積極的な温暖化対策に取り組む姿勢を明確にすることが必要だ。

 パリ協定が「歴史的」と呼ばれる理由の一つは、中国や米国などの大排出国から最貧国まで、全加盟国が、温暖化による被害を防ぐ行動を取ると約束したことだ。

 世界第2の温室効果ガス排出国としてパリ協定の合意に積極的に貢献した米国が離脱し、米国内の排出削減や途上国支援が滞ることになれば、協定の信頼性や実効性が揺らぎ、他国の姿勢にも悪影響を与えかねない。

 だが、パリ協定の合意に大きく貢献した前政権から米国の姿勢が変わっても、変わらないものがある。

 人間が出す温室効果ガスの排出を大幅に減らさなければ、温暖化によって社会や経済に取り返しが付かない被害がもたらされるだろうという科学の結論だ。

 米国離脱の実質的な影響がさして大きくはないのも事実だ。協定の定めによれば、米国が法的に離脱できるのは早くても2020年の11月で、トランプ大統領の最初の任期が終わる時期となる。

 米国内の状況も、ブッシュ(子)政権が京都議定書からの離脱を決めた01年のころとは大きく異なる。米国では天然ガス発電やコストが下がった再生可能エネルギーが拡大し、排出量が多い石炭火力発電が減っている。パリ協定が求める「脱炭素社会」づくりに向けた動きの中に、ビジネスチャンスを見いだしつつある多くの企業は、協定を支持し、米国の残留と強力な対策実施を求めている。

 カリフォルニアをはじめとする多くの地方政府が、連邦政府の姿勢にかかわらず、大幅な排出削減に取り組む姿勢を示している。温暖化に関する科学を否定することができないのと同様、トランプ大統領が、この大きな流れを止めることはできないだろう。

 米国離脱を受け、国内の一部の産業界などからは「米国が消極的だし、国際状況が不確実なのだから、日本の対策強化には慎重であるべきだ」との声が出ている。

 だが、米国の離脱を自らが行動をしない理由にすることはできない。

 「産業革命以来の気温上昇を2度より十分に下回るようにする」との協定の目標実現には、各国が削減目標を深掘りすることが求められるからだ。

 パリ協定が求める社会の変革のために、革新的な政策を駆使して大幅な削減を実現し、それが自国と世界の経済にとって利益になることを示す。それが「米国なきパリ協定」の中で、日本が果たすべき役割だ。(共同通信・井田徹治)

このエントリーをはてなブックマークに追加