トランプ政権のアジア外交がスタートした。新政権の閣僚として初めて来日したマティス国防長官が安倍晋三首相と会談し、引き続き日米同盟を堅持していく方針を確認した。

 予測不能な言動を繰り返すトランプ新大統領の下で、同盟関係はいったいどうなってしまうのか-。そうした不安が広がっていただけに、マティス氏が東アジアに関わっていく姿勢をはっきりと示したのは大きな意味がある。

 とりわけ、日本を守る米国の「核の傘」が、今後も機能するかが最大の焦点だった。この点についてマティス氏は「北朝鮮など共に直面する課題に、日米安保条約第5条が重要だと明確にしたい」と、引き続き同盟関係を大切にしていく考えを伝えた。沖縄県の尖閣諸島についても、日米安保の対象であるという原則を確認したという。

 今回の外遊で特に目立ったのは、北朝鮮に対する厳しい姿勢である。北朝鮮はこれまで、国際社会の制止を振り切って核開発へと突き進み、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験も最終段階にあるという。このまま核弾頭の小型化が進み、ICBMへの搭載が可能になれば、その脅威はアジアだけにとどまらない。

 マティス氏が「効果的で圧倒的な対応を取る」と強く警告したのも、当然だろう。「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を韓国に配備する方針も表明している。北朝鮮の脅威から同盟国を守るのが目的だが、その裏には対中国戦略も透けて見える。

 トランプ氏はこれまで、中国に対して強硬な言動を続けてきた。例えば、中国は台湾まで含めた「一つの中国」を原則としており、米国政府もこの原則を認めてきた。が、トランプ氏は台湾の蔡英文総裁と電話で会談するなど、見直しに踏み込む可能性を示唆している。

 中国側は、韓国へのTHAAD配備が自国の脅威になりかねないと受け止めており、このまま進めば、さらなる反発を招くのは間違いない。日本にとっても中国関係は緊迫が増すばかりだ。

 今回の会談では、トランプ政権下でもこれまで通り「核の傘」がきちんと機能し、尖閣諸島も日米安保で守られるという回答を引き出したが、これで安心するわけにはいかない。

 というのも、今回の会談で確認したのは、日米同盟の原則を確認したにすぎないからだ。むしろ、これからが正念場になるだろう。

 ビジネス界出身のトランプ氏は、外交にも「取引」という言葉を好んで用いているようだ。今回の会談ではマティス氏側からは持ち出さなかったものの、トランプ氏が度々、不公平だとやり玉に挙げてきた在日米軍の駐留経費の問題などは、その筆頭だろう。

 日米同盟は日本のためだけの安全保障戦略ではなく、地域の安定に大きく貢献してきた。日本が専守防衛に徹する一方で、在日米軍を受け入れることで、アジア・太平洋地域の平和と安定につなげてきたわけだ。どちらか一方だけの負担で成り立っているわけではなく、覇権主義を強める中国に向き合う上でも日米双方にメリットがある。トランプ政権には、今後もこの原則を繰り返し伝えていくしかない。(古賀史生)

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