交番業務の立ち番をする渡瀬瑞穂さん。事件や事故が発生すれば、現場に駆け付ける=佐賀市兵庫南

 寒さが厳しい早朝、立ち番の女性警察官が往来する車に視線を注いでいた。

 佐賀市の住宅街にある兵庫交番に勤務する巡査渡瀬瑞穂さん(25)は警察官になって2年目。男性と同じように交通取り締まりやパトロールを担い、暴れる酔客もなだめる。管轄内で事件や事故が発生すれば、直ちに現場に駆け付ける。

 佐賀県警の女性警察官はこの10年で倍増し143人。主に交通分野だった配属先も、刑事や生活安全など各部門に広がった。採用枠も拡大し、本年度は新任69人のうち女性は16人で、初めて2割を超えた。

 人権的な配慮から、加害者が女性の場合、取り調べや所持品検査の要員にもなる。渡瀬さんは「無線の情報を聞き分けて、必要と思えば通報先に向かうのを買って出る」と話し、求められる役割を自覚している。

 既に女性の存在が欠かせない職場になっているが、昼夜問わず多忙で、プライベートも犠牲にするイメージが強い警察組織。仕事と家庭の両立は男性警察官を含めて長年の課題だ。

 神埼署地域課の巡査部長笹川敦子さん(39)はかつて、1年の育児休業(育休)の復帰直後から深夜勤務をこなした。子どもが発熱しても、職場に迷惑をかけられないという思いが先立ち、警察官の夫と交代で休みを取って看病をした。

 長期間の育休取得や育児支援制度の利用は、こうした後ろめたさに加え、「甘えている」と捉える雰囲気が職場に横たわり、申請をためらわせていた。

 県警は女性の増員とともに、国のワークライフバランス(仕事と家庭の調和)の推進を受け、組織改革を進める。深夜勤務免除や業務時間短縮の制度周知にも努め、職場の幹部にも理解や環境改善を求めた。

 女性の育児休業の期間は次第に延び、今では平均取得日数が約700日。笹川さんは3人目を出産したとき、3年の育休を取り、昨年春の復帰前に職場に通って業務の説明を受け、ブランクの不安が和らいだ。周囲に休みも言い出しやすくなり、「以前の育休のときと違って、職場が様変わりしたように感じた」。

 こうして改革が進む一方で、男性の育児参加は道半ばだ。出産時の補助休暇(3日間)の取得率は79%、育児休暇(5日間)取得も22%にとどまる。いずれも目標水準には届かず、性別による役割分担の意識を拭うのが容易ではないことをうかがわせる。

 県警は2021年に女性の割合を10%に引き上げる目標を据える。警察官の10人に1人が女性になる時代に向け、これまでの組織風土をさらに見直し、地域を守る確かな手だてを探る。

 女性警察官の初採用から25年を記念して3日に佐賀市で開かれたシンポジウム。「1期生」の警部桒原恭子さん(44)は後輩に呼び掛けた。「能力や個性は違っても、根っこにある女性警察官のプライドはみんな同じ。努力して役割を果たし、一人一人が自分の花を咲かせられるように歩いていきたい」

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