■地元住民思い交錯

 石井啓一国土交通相は20日、国の事業見直し対象となっていた城原川ダム(神埼市)建設の事業継続を決めた。民主党政権時の2010年にダム再検証の対象になり、建設を前提とした設計や調査は中断していたが、再開する。佐賀県の山口祥義知事は取材に対し、「本当に長い時間がかかったが、大雨対策は喫緊の課題だ。できるだけ早く、安全に、かつコストのかからない形で整備してほしい」と述べた。

 城原川ダムは貯水量350万トンで総事業費485億円。堤高約60メートルで、水をためずに放流口を設け自然放流する、洪水調節のみを目的とした穴あきの流水型ダムで整備する。建設事業着手から完成まで13年程度としている。水没地域の用地補償に関しては、用地調査に2年、土地や家屋買収の算定根拠となる「補償基準」の妥結に1年、補償契約に1年の計4年を見込む。

 国交省は「建設事業の着手時期は未定」としている。これまでも検証費用などを予算化してきたが、今後は建設を前提とした調査に入るため、来年度概算要求などにも反映される見通し。

 国交省は今月8日、有識者会議を開き、九州地方整備局がまとめた「コスト、実現性からダム案が優位」とする方針について、「ダム検証の基準に沿って検討された」と承認した。流水型ダムに対し「利用水量がないダムでは有効な形式だ。運用実績が少ないので、今後のデータ収集を図ることが重要」との発言があった。

 城原川ダムは国の直轄事業として1971年に予備調査を開始したが、賛否を巡る住民の争いで頓挫。県は2003年に流域自治体の首長会議を設け、05年に流水型ダムの建設を国に申し入れたが、民主党政権は09年に再検証の対象とした。15年5月から関係自治体と九地整が「検討の場」で協議を重ねてきた。

■「安心、一気に進めて」「洪水耐えるか、疑問」 地元住民思い交錯

 城原川ダム建設の事業継続が決定された20日、神埼市脊振町広滝の水没予定地区の住民は「長年抱えてきた課題の解決のめどがたった」と改めて安どした。ダム建設に反対してきた流域の市民グループは「自然を相手にダムが機能するのか疑問。私たちの声は聞いてもらえたのか」と不満を吐露し、やるせない表情を見せた。

 知事はじめ流域の市長も流水型ダム案に賛同した5月の「検討の場」で、確かな手応えを感じていた地元対策委員会の眞島修会長(78)。国に翻弄(ほんろう)されてきた45年間をかみしめつつ、「これまでの経緯からやきもきする住民は少なくなく、何度も家に電話がかかってきた。これで皆、安心するだろう。一気に進めてもらいたい」と期待を寄せた。

 一方、ダムによらない治水を訴えてきた市民グループ「城原川を考える会」。洪水時の水をあふれさせて流量を調節する伝統的な「野越し」の調査研究を続けてきただけに、佐藤悦子代表(64)=神埼市千代田町=は「近年の雨の降り方や大規模洪水にダムは耐え得るのか危機感がある。地域や生きた川を守っていくため自分たちの歩みは止めない」と語った。

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