「川の水を分水して作った広い運河が、市内を縦横に貫いており、その両河岸に広い道路を通して市街地を連ねたところは、わが東京とそっくりである」(『米欧回覧実記』現代語訳・水澤周)-。歴史学者として名を残す元佐賀藩士・久米邦武が、岩倉使節団の一員として訪れたロシア・サンクトペテルブルクについて記している◆今から約145年前、季節は春。乗り込んだ鉄道のずさんな工事ぶりに「揺れが激しく人を苦しめる」と閉口するが、サンクトペテルブルクに到着すると「こんな荒れ果てた原野のただなかに、この都市だけは華麗な建物を並べて雄大な都となっている」と感嘆した◆久米を魅了した街で、市民を狙ったテロが起きた。地下鉄構内に白煙が立ちこめ、爆風でねじれたドアから人々が逃げ出す。乗客が撮影した映像が生々しい。13人が犠牲になり、けが人が出た◆政権への打撃を狙ったのか。プーチン大統領の出身地であり、滞在のタイミングに合わせたように起きた。実行犯は特定されたが、イスラム国の関与も取り沙汰されている◆久米が「そっくり」と評した都市構造は、地下鉄を張り巡らせた現代にも通じるだろう。サンクトペテルブルクは来年夏にサッカーワールドカップを、東京は2020年に五輪を控える。テロをどう封じ込めるか。連帯が試される。(史)

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