遺伝子配列を調べた結果発見された新種のライム「ヒマラヤンライム」。寒冷地でも生育が可能なことを突き止め、将来的には日本での栽培も視野に入れる(ツェリンペンジョールさん提供)

新種のライム「ヒマラヤンライム」を発見したブータン王国の研究者ツェリンペンジョールさん(左)と、共同研究者の一人、佐賀大学の永野幸生准教授=佐賀市の同大学本庄キャンパス

■寒冷地生育可、日本での栽培も視野

 佐賀大学大学院農学研究科の元院生で、ブータン王国の研究者ツェリンペンジョールさん(47)が、同大学などと共同で遺伝子分析を行い、同国原産の新種のライム「ヒマラヤンライム」を発見した。世界に広く流通する熱帯原産の品種と異なり、難しいとされてきた寒冷地での栽培が可能なのが最大の特徴。将来的な日本国内での栽培も視野に、現地政府との交渉や保存・育種の研究を進める。

 ライムは、インドから東南アジアにかけた地域で料理に幅広く使われている香酸かんきつ類。ブータンの民間療法では、塩漬けを発酵させたものが下痢や胃痛に効能があるという。ツェリンペンジョールさんは母国の農林省で農業技術の普及改良に携わりながら研究を続けてきた。

 佐賀大学農学部は、全国有数のミカン産地の地域特性を生かし、かんきつ類の収集・保存で世界最大規模を誇る。DNAの塩基配列を解析する「次世代シークエンサー」で、熱帯原産種に由来するメキシカンライムと比較した結果、インド高地原産のシトロンを共通の父とする一方で、新種はインド高地が原産のマンダリン(ポンカン)をルーツに持つことが分かり、“異母兄弟”と結論付けた。

 ブータンは国土の半分近くが標高3千メートルを超える高地性気候。同国のライムは温暖な南部地域で一部栽培されているほかは輸入に依存している。農林省は昨年末、公式ホームページで研究成果を公表し、「商業化の可能性がある」と期待を寄せた。ツェリンペンジョールさんも「今回の発見で母国農業の発展につながればうれしい」と喜ぶ。

 ライムは日本ではジントニックなど、カクテルの素材として人気だが、ほとんどが輸入品で、香りも劣化している。共同研究者の一人で、佐賀大学総合分析センターの永野幸生准教授は「九州での試行栽培を経て産地化に成功すれば、大きな付加価値を生むことができる」と指摘する。「幸せの国」として知られるブータンやヒマラヤ山脈の持つ神秘性もブランドイメージを後押ししそうだ。

 ただ、植物の持ち出しに関する規制は厳しく、研究グループは同国政府との交渉を続けて試行栽培にこぎ着けたい構え。優良品種の選抜や知的財産登録に向けた研究も進めていく。

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