厚生労働省は生活援助サービスの縮小など、介護保険制度見直しに向けた議論を本格化させた。今後の検討項目には、75歳未満の高齢者の自己負担を2割に引き上げるなど、負担増・給付抑制のメニューが並ぶ。少子高齢化の進行で社会保障財源を支える現役世代の負担が年々重くなっており、高齢者にも応分の負担を求めるべきだとの見方が政府内で強まっていることが背景にある。

 昨年以降、政府の経済財政諮問会議などを舞台に現行制度への注文が相次ぎ、さらに消費税率10%への引き上げが先送りされたことで財源の確保がより難しくなった。財務省を中心に「制度見直しは不可避」との圧力が増す中、年末にかけて検討が進むが、高齢者から反発の声が上がっている。

 検討項目のうち最も抵抗感が強そうなのが介護サービス利用時の自己負担割合引き上げ。2000年度の制度発足から1割負担だったが、昨年8月、一定の所得がある高齢者は2割に引き上げられた。財務省は対象を広げ、65~74歳を「原則2割負担」とするよう主張。厚労省は「高齢者の負担は限界に近い」と慎重な姿勢だ。

 月ごとの利用料が高額になった場合に自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」制度の見直しも課題に。公的医療保険の同様の制度に比べて一部で上限額が低いことから、引き上げ論が浮上している。

 一方、現役世代の負担の在り方も焦点になる。40~64歳が支払う保険料で、収入が多い人ほど負担が重くなる「総報酬割」の導入を検討する。給与が高い人が対象となるため、大企業が中心の健康保険組合や経済団体は反対している。【共同】

=識者談話=

■1億総活躍」に逆行

 日本ケアマネジメント学会の服部万里子副理事長の話 要介護1、2の人には認知症の人も多く、身体的な介護の必要性は低い一方で、訪問介護の「生活援助」サービスへのニーズは大きい。サービスを利用する際の負担が重くなれば、低年金の高齢者は利用を控えることになり、生活の質が下がって症状の悪化にもつながる。結局、家族に負担がのしかかり、虐待の増加も懸念されるほか、介護を理由とする離職も迫られる。政府が掲げる「1億総活躍」に逆行している。介護保険料は40歳から支払うのに、いざ必要な時に使えないのであれば公的保険制度への信頼が低下する。

■利用者の生活置き去りに

 淑徳大の鏡諭教授(公共政策学)の話 要介護1、2の「生活援助」サービスの見直し議論は、財政の厳しさが発端となっており、利用者の生活が置き去りになっている。介護保険制度は給付を受けるための保険料を納めるという信頼関係、社会的な連帯の下で2000年度に始まったが、短い期間での見直しが相次いで利用者も事業者も振り回されている。縮減ありきの議論はおかしい。生活の安心のために必要なサービス水準と、その負担の在り方をセットにした国民的な議論が必要だ。

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