国の補助金をだまし取ったとして、大阪地検特捜部は詐欺の疑いで森友学園前理事長の籠池(かごいけ)泰典容疑者と妻を逮捕した。国有地が8億円余りも値引きされ、小学校用地として学園に売却されたことが2月上旬に発覚。小学校の名誉校長に安倍晋三首相の昭恵夫人が就任していたことから学園が優遇されたと野党は一斉に追及した。

 だが政府は売買交渉の経緯について説明を拒み続け、野党も攻めあぐねるうち、安倍首相の友人が理事長を務める加計(かけ)学園の獣医学部新設計画に絡む疑惑が噴き出す。森友問題は後景に退いた形になったが、内閣支持率急落や東京都議選の自民党惨敗を招いた政権不信の原点はそこにある。

 問題の核心は言うまでもなく、8億円もの値引きの不透明な経緯であり、未解明のままだ。国有地を不当に安く学園に売却して国に損害を与えたとする財務省近畿財務局の担当者に対する背任容疑の告発も特捜部は受理している。政府が説明に背を向ける中、告発によって解明を託されたことを重く受け止め、捜査を尽くしてもらいたい。

 加計問題を巡る閉会中審査でも野党は森友問題を取り上げ、昭恵夫人の国会招致を求めたが、首相は「疑惑の目を向けられるのはもっともだ」としながらも「国会がお決めになること」とかわした。「反省」「謙虚」を強調しても、説明責任と向き合わない限り、不信の払拭(ふっしょく)はかなうまい。

 国有地売却を巡っては、昭恵夫人の存在が焦点となった。財務省側との売買交渉で籠池前理事長は開校予定の小学校の名誉校長だった夫人との関係を強調。交渉内容を逐一、夫人に電話で報告したという。さらに国有地の定期借地契約に関する要望などを夫人付の政府職員に伝え、財務省幹部の回答を職員からファクスで受け取っていた。

 昨年3月、この幹部と面会。その際、売却前の学園との定期借地契約について幹部が「特例」と述べていたことが音声記録から分かっている。翌月には小学校用地の地中にあるごみの撤去費が8億円余りと見積もられ、6月に評価額の14%に当たる1億3400万円で売買契約が結ばれた。

 国会の証人喚問で前理事長は、この間の経緯を振り返り「神風が吹いた」と語った。撤去費算定の根拠にも疑問が投げ掛けられ、夫人の存在が財務省側の忖度(そんたく)につながり、学園が優遇されたのではとの疑念は根強い。

 だが財務省は省内規則に基づき学園側との面会・交渉記録を廃棄したとして説明を拒み、調査の要求も突っぱねた。夫人も口を閉ざしている。野党は全容解明には夫人の証人喚問が不可欠としたが、政府と与党はあくまで「私人」との立場を崩さず、応じなかった。

 特捜部は財務局側に説明を求めるなど捜査を進めている。ただ背任事件では自己・第三者の利益を図る目的や損害を与える目的を立証することが求められ、ハードルは高い。また通常国会閉幕後の家宅捜索で財務局など背任容疑の関係先は対象になっておらず、現時点でどこまで核心に迫れるか見通すのは難しい。

 昭恵夫人の関わりも含め、国民に見えないところで何があったのか。首相が何度も約束した「丁寧な説明」が果たされるのを待ちたい。それなしに内閣改造で体制を一新したとしても、疑念はくすぶり続けるだろう。(共同通信・堤秀司)

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