地元同意を求める範囲について、法令の定めがないことを理由に示す考えがないと県幹部に説明する小澤典明資源エネルギー政策統括調整官(左)=1月26日、佐賀県庁

 原発再稼働の「地元同意」を巡っては、法的な規定がない。事実上の同意が求められているのは、福島第1原発事故以前と同様、立地自治体に限られ、周辺自治体の不満は強く、大きな論点になっている。

 国はエネルギー基本計画に基づき「立地自治体等関係者」の理解を得ながら再稼働を進める方針。九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)も、国が佐賀県の山口祥義知事に求めているのは、再稼働に対する「理解」になる。

 来県した資源エネルギー庁の小澤典明・資源エネルギー政策統括調整官は、国が同意を求める範囲に関し「要件になっておらず地元の範囲を示すことは考えていない」と説明した。

 山口知事は2月の定例会見で「概念として存在しないことが確認された」と述べた。これに対し全国の市区町村長らでつくる「脱原発を目指す首長会議」は、「安全確保において立地自治体や周辺自治体の立場を弱める悪影響を及ぼす」と反発する声明を出した。

 福島の事故後、半径30キロ圏の自治体には避難計画の策定が義務付けられた。一方で、同意権がないまま理解活動が進む現状に、伊万里市の塚部芳和市長は「法整備すべき」と主張する。県内では8市町の首長が30キロ圏やそれ以上の同意を求め、山口知事は県の考えは示さず「国家的に議論すべき課題」と問題提起した。

 それでも、国から求められた「理解」には「何らかの表明が求められている」とする。再稼働を容認する前提の一つに「県民の理解」を挙げ、さまざまな場で意見を聴いてきた。

 県内各団体の代表で構成する広く意見を聴く委員会や県内20市町の首長会合では賛否が割れたが、条件付き容認派が慎重派を上回った。容認派は、電気料金の高止まりが経営を圧迫している現状や温暖化を懸念した。慎重派は、風評被害対策の説明が不十分と指摘し、事故時に要援護者の対応を担う関係者は避難計画に現場の対応が追いついていない実態を訴えている。

 一方、県内5会場で開かれた県民説明会には計1048人が参加し、質疑で容認意見は出なかった。メールや提案箱などに寄せられた意見や質問417件(3月末現在)も大半は反対だった。県内外の市民団体からは再稼働に反対する多数の要望がある。推進派は経済団体などが県に対する全般的な政策の申し入れの中で盛り込んでいる。

 山口知事が重視する県議会では、13日に最大会派の自民を中心に提案する容認決議が採決される見通し。少数会派からは「知事の都合で臨時に招集され、決議は拙速」と批判も上がる。

 3月下旬以降、30キロ圏に入る長崎県の松浦市長や平戸市議会が相次いで再稼働反対を表明している。佐賀県が長崎、福岡の声をどうくみ取るかも注目される。

 九州大学大学院の吉岡斉教授(科学史)は、自治体は住民の生命、健康、財産の保護を最優先すべきとし「県民の意見を尊重した判断を行う必要がある」と指摘する。住民投票や世論調査の必要性を挙げ「どのような努力を行っているのか」と投げ掛ける。

 「県民の理解」をどう推し量るのか、山口知事は具体的に示していない。

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